悪魔への欲望

創作の怖い話 File.30



投稿者 ストレンジカメレオン 様





私は売れないホラー作家である。

どんなネタを書こうがぱっとしないものばっかで、自分に嫌気がさしてくる…

そんな時、私はこの世のものとは思えない悪夢を見た。

とても恐ろしく苦しく悲惨な夢だった。

夢から覚めた時は、本当に夢であって良かったと起きた瞬間に腰が抜けて、

数十分は自分では起き上がれない状態になっていた。

だがその悪夢の恐怖を文にしてみると、意外にもしっくりきた作品となったのだ。

(これは、とても恐ろしい悪夢だったが得したものだ!)

私はそれ以来、また悪夢を見たいと思っていた。

ある日、私がいつものように本屋に行くと興味深い題名の本が目に止まった。

〈悪夢を見る方法〉

(悪夢を見る方法か……こんな書いてあることで本当に悪夢を見ることが出来るなら苦労はしないよ…

まあ一つのネタになるかもしれないし、買ってみるか!)

私は家へ帰ると早速、本を開いた。

〈まずはお試し、第一段階、まず第一段階の恐怖を味わうための悪夢を見るためには、

ただこの本を枕の下に入れて寝て下さい。

ただそれだけで第一段階の悪夢を見ることが出来ます。〉

(そんな簡単なことで良いのか、)

その夜、半信半疑で私は本に書いてある通り、枕の下に本を入れて、寝ることにした。

そして私は本に書いてある通り悪夢に悩まされたのだ…

(ゆ……夢か…良かった…これが本の効果か!しかしまだ文にするには、ぱっとしない夢だ…)

私は本を開き、続きを見た…

白紙のページが続く……

(あれ……白紙ばっかじゃん…)

そして突然、文字が書いてあるページが現れた。

〈第二段階、ここまで見ているということは、少し気に入ってもらえたようです

ね、次は第二段階の恐怖の悪夢を見る方法です、

今度は犬か猫の首を庭に埋めてください。そしてまた前と同じようにこの本を枕の下に入れて下さい。

そうすれば第一段階の時よりも恐ろしい第二段階の悪夢を見ることが出来ます。

(犬か猫の首…………なんてことさせるんだ………そんな事はしたくないな……

でもそれほど恐ろしい悪夢を見れるのかもしれないしな、よし、少し気は引けるがやってみよう。)

私は本に書いてあることを実行するため、野良猫を探しに公園へと出掛けた。

そして一匹の猫を捕まえ、家を持ち帰った。

私は暴れる猫の首を思い切り、包丁で切り離した…

とても後味の悪い感覚に襲われる…

包丁を振りかざした手が猫の首を切った後、小刻みに震えていた…

(これで、さらに恐ろしい悪夢を見ることが出来るはずだ…どんな恐ろしい夢だろうか、)

私は猫の首を庭に埋め、のこった胴体はポリ袋に入れて捨てた…

そしてその夜も本を枕の下に入れ眠りについた。

そして私は本当にこの世のものとは思えないような恐ろしい悪夢を見ることが出来た。

目が覚めてもまだ、あまりの恐ろしさのため、体中が痙攣状態であった。

(す、すごい………一段階の時とは比べものにならない!!

なんて恐ろしい夢なんだ!まさに本物の悪夢だ!)

早速、私はその悪夢の内容を物語にしてみた。

(これは、良い作品が出来たぞ!これならきっと人気が出るはずだ!)

しかし、自分が思っていたほどの人気にはならなかった…

(まあ、こんなものか、まだ本には続きがあったな。

もしかしたらさらに恐ろしい悪夢を見る方法があるかもしれない!)

私はまた本を取り出しページを開いた。

また白紙のページが続く…

そして

〈第三段階〉

(あった!!これだ!)

〈第三段階、ここまで読んでいるということは、あなたは相当、悪夢に飢えてますね。

次は第三段階の悪夢を見る方法です。

二段階よりはるかに恐ろしい悪夢を見ることが出来ます。

今度は人間の首を庭に埋めて下さい。

そしてまたこの本を枕に下に入れてください。

そうすれば第三段階の悪夢を見ることが出来ます。〉

「人間の首っ!?………………」

私は内容の異常さに驚いた。

猫の首でさえ、異常なことなのに、今度は人間の首とは、私に殺人犯になれということか……

流石にそこまでは私に出来るはずがない……

(しかし、第二段階よりはるかに恐ろしいとは一体、どんなに恐ろしいのだろうか…)

それから第二段階の悪夢を見続けていたが、最初はあまりの恐ろしさに驚いたが、

何度も見ていると慣れというものだろうか、あまり恐怖を感じなくなってきた。

(こんなんでは、良い物語が書けない!!第三段階の悪夢は一体どんな内容なんだろう!?)

人間の首を埋める、一人の人間をこの手で殺し、首を切れば第三段階の悪夢を見ることが出来る…

私の頭の中で葛藤が始まっていた。

ホームレスならバレずに実行出来るんじゃないか…だからといって一人の人間を殺害することになる。

気が付けば、私は深夜の公園を包丁を持ってさまよっていた…

(ここの公園ならホームレスは沢山いるし、一人くらいいなくなっても大した事にはならないだろう…)

一人、無防備に寝ているホームレスがいる。

(あいつだ!!あいつを殺そう!)

忍び足でホームレスに近づき、背中に一突き、さらにもう一突き、……

完全に息をしなくなったのを確認し、林の中に引きずり込み、そこで首を切断…

私は感触の気持ち悪さと罪悪感をこらえ、首を切断した…

悪夢を見るために…

そして私は、ホームレスの首を持ち帰り、庭へと埋めた。

「こ、これで、さらに恐ろしい悪夢を見ることが出来るぞ!!ヒヒッ ヒヒッ!」

私はいつものように枕の下に、本を入れて眠りについた。

そして、人間の想像をはるかに上回る地獄の悪夢を見ることが出来た。

「こ……これは、尋常じゃない!!こんな地獄なんて想像したこともなかった!!

凄すぎる……これを文にしたら、最高の傑作になるぞ!!」

私はその最恐の悪夢を物語にして綴った。

自分で文を書いてるだけ、その悪夢を鮮明に思いだし、手が震えだした…

なんとか震える手で物語を書き上げた。

「これは最高の作品が出来たぞ!これならいけるはずだ!ははっ」

案の定、その作品はかなりの人気を集めベストセラーとなったのだ。

(全部、この本のおかげだな!!でもまだ本は終わってなかったな…まだ次の段階があるってことか!?)

私はこの時点で満足しきっていたが、本の続きが気になって仕方がなくなった。

そして私はまた、本を取り出しページを開いた…

(やっぱり続きがありそうだ……三段階は人間の首だったから、

今度はもしかするともっと異常な要求があるかもしれないな…一応見るだけ見ておこう。)

そして文字が書いてあるページが予想通り現れた…

〈最終段階〉

(おっ!これが最後か!)

〈最終段階、ついに最終段階まで来ましたね。あなたはもう一人の命を奪っていますね。

ここまで来たらあなたはもう引き返せませんよ。最後は究極を用意してあります。〉

(究極か……一体どんな要求をされるんだ…)

〈次のページを開くとなかに小さな粉薬が入っています。それを自分の血液に混 ぜ、飲んでください。

そしたらいつもと同じようにこの本を枕の下に入れて眠りについてください。

そうすれば最終段階の究極の悪夢を見ることが出来ます。〉

(こんな簡単で良いのか!?最終段階は!?これなら最終段階の悪夢も見れるぞ!!)

私は次のぺージを開き、粉薬を取り出した。

(これを自分の血に混ぜ合わせれば良いんだな…)

自分の血液と粉薬を混ぜ合わせ、それを私は飲み干した。

(こ、これで最終段階の究極の悪夢を見ることが出来るぞ!!

なんたって究極だからな、今までとは比べものにならないはずだ!!)

私は最高の恐怖と共に期待に胸を躍らせ眠りについた。

〈最終段階の究極の悪夢まで来たということはあなたは、究極の異常者ですね。

あなたみたいな人間は地獄へ落ちたほうが良いです。

地獄へ落ちて、究極の悪夢から二度と目を覚ますことなく、究極の苦しみを永遠に味わい続けてください。

それが最終段階の悪夢です。



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