トンネルの傍

創作の怖い話 File.3



投稿者 匿名希望 様





自分で言うのもアレだけど、走り屋やってた頃のボクは今と違って結構モテた。

女の子と遊ぶよりもMとバイクに乗って走りに行ってた方が楽しかった。

そんなボクらに絡んでくる?

付き纏ってくる?

うまく表現出来ないのだがなついているというか、頼ってくるというかそんな女の子がいた。

その娘はTといい、ボクの地元に住んでいてお嬢様系の学校に行っていた。

冷たい感じのする美人系の顔をしていた。

出会いは微妙だったが結構気合いの入った娘だった。

その日はボクとM、Tとその友達で山にきていた。

紹介して貰うとかそんなんぢゃない。

ただ、ついてきたいというから一緒に行っただけだ。

待ち合わせ場所に友達を乗せてきたのにはちょっと引いたが、

来てしまったものはしょうがないという事で下道でトロトロと走ってお山を目指した。

2ケツしている奴がいるとやっぱり気を使うし普段はノンストップで走るのに間で休憩を入れたりする。

このペースで山に行くと着いてもTは大して楽しめないと思った。

夜明けが近づく程走っている人のペースが速くなるからだ。

とりあえずコンビニ休憩をいれる。

くわえタバコでMとじゃれあう。

Tの連れてきた娘は自称霊感の強い娘らしい。

(そんなの夜のお山に連れてくんなよ…)

Mとそんな話をしていた。

普段の倍位の時間をかけてお山に到着。

徐々に理性を失っていくバカ二人。

Tとその友達が遅れているのにも気付かず走り続けるバカ共。

分岐路で減速した時にTが遅れている事に気付くがいつもの事だと思い気にせず先に行く。

目的地に着き、いつもの所にバイクを止めてタバコをくわえながら走る準備を始める。

Tとその友達も遅れてやってきた。

ボクとMは走りの輪に混ざり走り始めた。

ボクはペースが少し遅くて自分に合わなかったのでしばらくしてギャラリーに戻った。

いつも停めているトンネルの近くにバイクを置き、

ブーツのマジックテープを剥がしツナギを腰まで脱いで袖をベルト代わりにして地面に座っていた。

タバコを吸うか吸わないか迷っているとMが戻ってきた。

Mもボクと同様にツナギを腰で縛りタバコをくわえながらこっちにきた。

「よ〜ごん、小便行こうぜ小便。」

「あ〜いいよ〜」

二人で並んでトンネルの脇の茂みに養分を与える。

バイクの所に戻るとT達がいた。

心なしか白っぽい顔をしてる。

「あんなトコで何してたの?」

Tの友達が話かけてきた。

「おしっこ」

(おいおいM、もうちっと気の利いた事いえよ…)

「そっかそれでか…」

「そうだよ…」

なんかよくワカンナイけど会話が成立してる…

「小さい子連れた女の人が凄い顔して睨んでたよ」

「えっマジで?」

「うん…」

「どの辺?どの辺?」

「アソコの…」

Tの友達は少し顔を強張らせて下を向いてしまった。

そしてか細い声で

「まだこっち睨んでるよ…」

「よっぽど器の小さい奴なんだなw」

MらしいといえばMらしい意見だ。

その時はホントに気にしなかった。

「ったくよーコレだから霊感ちゃんは嫌なんだよ…」

Mが毒づく。

確かに今まで用を足すのに同じ場所を使っていたが何も起きた事はない。

何リットルの養分を撒き散らしたかわからない位だ。

今まで何人かの霊感ちゃんや霊感くんと話をしたが、

たいてい何も起こった事のない所をヤバイって言ってみたり、

よく事故が起こる所にいても何も感じないって言ってみたり、

はっきり言って霊感ちゃんの言う事を聞き流していた。

霊感ちゃんがウダウダ五月蝿いのでボクとMにもチャンネルが合いかけてきた。

奇妙な気配を感じ始めてきてしまった。

(まったく迷惑な話だ…)

ボクはMと話し、ひとまづ場所を変える事にした。

ファミレスにて…

霊感ちゃんが熱く語る。

アレは絶対に地縛霊だから危ないよ!

絶対にアソコにはもう行っちゃダメだよ!

なんかあっても私は知らないよ。

など色々と熱く語ってくれた。

「あっ、大丈夫、オレそ〜ゆ〜のまったく信じてないから。」

Mの心ない一言で霊感ちゃんは何も言わなくなった。

妙に気まずい空気になりそのまま解散になった。

解散といっても出先で気まずくなり、別々に帰る事になっただけなのだが…

Mは霊感ちゃんを完璧に無視し、2ケツしているTが着いてくるには若干早いペースで走っている。

ボクも霊感ちゃんと係わるのが苦痛だったのでMのペースに合わせて走る。

Tとの距離は徐々に開きやがていなくなる。

適当にじゃれ合いながら適当に走り適当に地元に帰る。

それからTとはしばらく顔を合わせなかった。

本当にしばらくTとは顔を合わせなかった。

どれ位Tと合っていなかったかなんて、はっきりいって意識していなかった。

ただ、凄く久しぶりにTがボク達の前に現れたのは確かだ。

Tは唐突に霊感ちゃんの事を覚えているか聞いてきた。

当然、ボクもMも覚えていなかったがまあ、

Mはどうだか知らないがはっきり言ってボクはこれっぽっちも覚えていなかった。

Tはボクらが思い出すまでしばらく説明していた。

Tって頭いいんだなと思った。

ボクが覚えていない事まで事細かく説明してくれた。

ボクらが思い出すとその後の霊感ちゃんの話をしだした。

あの後、霊感ちゃんは徐々に壊れていったらしい。

『あの親子が怒ってる』

『なんで私を睨むの?』

『私は何もしてない』

なんて事を一人でブツブツいう様になったらしい。

最初はTも相手にしていなかったのだが、

何もない空間を見ながら本気で怯える様になってからは心配になったらしい。

流石は霊感ちゃんの親だって思った。

一番最初に連れて行ったのが神社にお払いっていうんだもん。

でも効果がなくて色んな所に行ったらしい。

それも効果がなくってノイローゼ気味になったらしい。

なんか壮絶な作り話っぽかった。

だから信じなかった。

その後もトンネルの傍でおしっこをするのは辞めなかった。

特に何も起こらなかった。

ただ…

大分後になってそのトンネルに女の子を連れた女の霊が出るという噂が流れてきた。




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