奇妙な1週間(3)

創作の怖い話 File.258



投稿者 でび一星人 様





いい気なもんね。

見せ物にされてるこっちはたまったもんじゃないわよ!」

バンッ!

OL風の女は思いっきり机を両手で叩いた。

「ま、まぁまぁ、落ち着いて下さい!

さっきの牧田って人みたいになっちゃったら大変ですよ!」

高校生風の男の子がそんなOL風の女をなだめた。


「ひょっひょ・・・。

とりあえず、今日は初日と言う事で、各自自己紹介した後、オヤスミ下さい。

明日の夜に一人目の話しを聞かせていただきましょう・・・。

それでは、そこのメガネの小太りさん、

まずは自己紹介をお願いします。」


「え、おれ?」

メガネをかけた小太りの男は自分を指差しながら言った。

「あ、お、おれは【樽田 出不夫】って言います・・・。

28歳です。

学生時代は陸上部でけっこう足も速かったんですけど・・・。

今では家でネットやるのが毎日の楽しみです。

・・・って、もう死んだからネットやる事もないか。

 コンビニでバイトするフリーターで、

・・・童貞はこの間捨てて・・・

・・・ん。

なんで死んだのかな。

死んだ原因は思い出せません・・・。

なにやらイクラをたくさん食べたような記憶はあるんだけど・・・。」


「・・・ひょっひょ。

ありがとうございました。

死んだ瞬間の記憶は、そのうち思い出すかもしれません。

焦らない事ですよ・・・。

・・・では、次はそこの高校生の男の子、どうぞ・・・。

「・・・あ、はい。」

高校生風の男の子は、立たなくても良いのに立ち上がり、自己紹介を始めた。


「僕の名前は【狩羽 健治】です。

18歳、高三です。

・・・えっと、

家族で旅行に出かけて、

船に乗ったところまでは覚えてるんだけど・・・

その後から記憶がありません。

・・・きっと、その後に死んだのかな・・・。


 生前?の記憶で、

【人間を丸ごと食べたら体に良い】と聞いたのを覚えています。

・・・もう試す機会は無いけど・・・。

これから約1週間、

よろしくおねがいします。」

狩羽健治はそういうとペコリと頭を下げた。


「ひょっひょ・・・

礼儀正しい高校生ですね。

我々汚い大人も見習わなければいけませんね・・・。

それでは、次はお嬢さんどうぞ・・・。」

デビロは高校生風の女の子に手を向けた。

「あ、はい。

・・・私の名前は【雪村 桜】です。

17歳、高校二年生です。

・・・えっと、

小さいころから体が弱くて、ずっと病院か家で生活をしていました。

でも・・・ようやく体調が良くなって・・・

学校に初めて行って・・・。

・・・いろいろありました。

でもなぜ死んだかは思い出せないです・・・。」



「ひょっひょっひょ・・・

カワイらしいですね・・・。

頑張って下さいね・・・。

・・・次は、キレイなお姉さんお願いします。」

「あ、はい。」

デビロに視線を送られ、

その20代後半の女性はゆっくりと自己紹介を始めた。

「・・・私は【吉田 里美】

皆さんより少し年上みたいですね。28歳です。

大学を卒業して、ウェイトレスのアルバイトをしてる時に、

当事付き合っていた彼と再会して、その後結婚して・・・

その後の記憶があまりありません・・・。

特にこれといって特技もありません。

今日から約一週間、よろしくお願いします。」


吉田里美はペコリと頭をさげた。

「・・・ひょっひょ。

アナタも丁寧な方のようですね・・・。


 では、次はそこのなよっとした男の子。

お願いします。」

デビロはナヨっとした高校生風の男の子に視線を向ける。


「はぁ・・・。

おれの名前は【早乙女 じろ吉】って言います。

高ニです。

んっと・・・なんで死んだのかは思い出せないんですが・・・

・・・おれ・・・

人を殺しました・・・。

正当防衛だったんですが・・・付き合っていた女の子を・・・。

きっとおれ、

さっきの説明聞いた限りでは、地獄行きなんだと思います。

・・・だから優勝を狙わせてもらいます。

皆良い人そうでなんか申し訳ないですが・・・

そういう事で・・・。」


早乙女じろ吉は『よろしく』も言わずに座りなおした。

・・・きっと【勝ちに行く】ので、変な情を抱かないようにしているのだろう。


「・・・ひょっひょっひょ。

ようやく人間の【素】の部分を見せてくれる人が出てきましたねぇ・・・。

・・・素の部分と言えば、次はあなた、お願いします。」


デビロはずっと不機嫌なOL風の女に目を向けた。



「・・・フン。

こんなアンタらの遊びで自己紹介するのはシャクだけど、

仕方ないわね、【地獄】ちらつかせられたら。

でも覚えてらっしゃい。

何かチャンスがあったら、必ずアンタに復讐してやるからね!」

OL風の女はそう言ってデビロを睨んだ。

デビロはニヤニヤと笑っている。

女は続ける。

「・・・私は【下山 静香】、24歳。

見た目の通りOLやってたわ。

でもその後悪い男にひっかかって夜のお店でも働いたわ。

・・・なんで死んだのかはわかんないんだけど・・・。

思い出しただけでも腹が立ってくるわ・・・。

あの男に限らず、

私を助けなかった人間全てにね!

もし優勝できたら、

あの男を呪い殺してやるわ!

・・・まあ、こんな話をここでしても仕方無いわね。

以上。」




「ひょっひょっひょ。

えらく威勢が良い・・・。

楽しみですねぇ。


ささ、お次はおじいさん、お願いします。」


デビロは最後の一人、

百瀬真一を指さした。


「・・・。

特に話す事は無いけども・・・。

名前は【百瀬 真一】 71歳。

皆さんに比べて、随分歳が離れているけど、そんなに気は使わないで下さい。

アダ名は【モモマー】です。

これは昔から皆にそう呼ばれてます。

だから皆さんも【モモマー】って呼んでください。

それに敬語は要りません。

タメ口でいいです。

なのでここから僕もタメ口で話させてもらうよ。

よろしくねwww」


「ププ・・・【モモマー】だって。

なんかおかしなアダ名だね。」


高校三年生の狩羽健治が笑いながら言った。

「ふふ。

おかしいアダ名でしょ。

でも、なんとなく頭に残るでしょwww」


百瀬はあえて言葉の語尾に【w】←をつけるよう意識した。

場の雰囲気を、少しでも和ませようと、

この若者たちに笑顔を与えてあげようと、

一人年老いた自分に出来るのはこれくらいだと、

そう思っていたからだ。


 「フフ。」

「はは・・・。」

もう一人の高校生の男の子、早乙女じろ吉と、28歳の美人、

吉田里美もそんなやりとりを見ていて笑みを浮かべた。

 百瀬はそんな三人を横目で見て、少し嬉しかった。

自分の行動で、この若者たちが笑った。

それが嬉しかった。

 【辛い時こそ、笑わなきゃいけない】

昔、父が言っていた言葉を百瀬は思い出していた。




パン パン パン!

デビロが手を叩いた。


「さあ。

皆さん、自己紹介も終わりましたね。

今日は各自、用意した部屋で休んでください。

1番目の方は、明日の夜21:00に話をしてもらいます。

なのでその時間になったら、各自この部屋に集合してください。

良いですね?」


「ちょっと!」

24歳OL風の下山静香が不機嫌そうに言う。

「アンタさ、『1番目』の方っていうけど、

話す順番はどうなるのよ?」


「おっと・・・

説明するのを忘れていました。

順番は、【ギャラリー】の多数決で決まります。

明日(日曜日)に話す最初の方は、

【今から明日の19:00まで】に【このトピのコメント欄】で【1番多く投票された人】になります。」


「・・・どういう意味よ?

ギャラリーって・・・どこにも居ないじゃない!」

「フフフ・・・。」

デビロは、ゆっくりと壁際まで歩き、そして壁をいっきに剥がした。



ベリベリベリ!


ものすごい音がした。


「・・・!?」

皆が驚いた顔でそれを見た。


剥がされた壁には、小さい無数の【モニター】のようなものが付いていた。

そしてそのモニターにはそれぞれ人の顔が写っていた。



「ひょっひょっひょ・・・。

彼らがギャラリーです。

今のヤリトリも、全て彼らには見られていました。

携帯から見てる者もいれば・・・PCから見てる者も居ます。

彼らが、明日に誰の話を聞きたいかを、気の向いた人が1票づつ、コメントしてくれるんです。

皆さんは何番目に話したいですかねぇ?

え?順番は関係ないって?

・・・果たしてそれはどうですかねぇ・・・。

ひょっひょっひょ。」

デビロは不気味に笑っている。


「ひょっひょ・・・

そうそう。

さきほども申しました通り、

百瀬さんは特別に最後に話して頂きます。

これはすごいハンデなのですよ・・・。

・・・まあ、日が進めば最後がどれほど有利なのかわかると思いますが・・・

ひょっひょっひょ・・・。

それでは、皆さんは明日の夜まで、お部屋でおくつろぎ下さい・・・。」


デビロが壁を指さすと、いつの間にかそこに廊下が現れていた。

その廊下の左右の壁には扉が付いていて、

ぞれぞれの名前の札がかけられていた。



 各自部屋に入っていくのをデビロはニヤニヤしながら見送る。



その後、デビロはモニターに写る顔に・・・つまりアナタ達に話しだす・・・。



「・・・さあ、皆部屋に戻ったようですね。

それでは、ざっとおさらいをしましょう。



 今部屋に入って行った7人が、

明日から1週間、

1日一人ずつ怖い話をします。


 その中で1番怖い話をした者はなんでも願いが叶います。(例外有り)

 1番怖くない話をした者は【牧田】のように地獄行きです。

それ以外の者は、本来行くべき天国か地獄に行きます。


 7人のプロフィールはこんな感じです。

【 

・樽田 出不夫(28)男 : 元陸上部だが、今は小太りメガネのフリーター。ネットが趣味


・狩羽 健治(18)男 : 家族旅行で船に乗ったところまで記憶有り。

【人間を丸ごと食べると体に良い】という話を聞いた記憶もあるらしい。


・雪村 桜(17)女 : 元々病弱で、高2で初めて学校に行った。そこで何か出会いがあったのかは隠してるっぽい。


・吉田 里美(28)女 : 美人。 大学を卒業後、ウェイトレスのアルバイトをしているときに元彼と再会→結婚


・早乙女 じろ吉(17)男 : なよっとしている。 意外にも人を殺してしまった経験有り(正当防衛)


・下山 静香(24)女 : とてもツンツンしている。 OL→風俗の職歴有り。 自分を陥れた男を恨んでいる。  


・百瀬 真一(71) : 老衰により死んだ老人。 年の功か、気遣いが素晴しい。 
                                      】



 ・・・尚、百瀬さんは、特別に最後の夜に話してもらう事が決まっております・・・。      

・・・さあ。

アナタはこの6人の中で、

まず誰の話を聞きたいですか?

明日の20:00までにこのトピにコメントして下さい。

一人1票づつでおねがいします。

1番票をゲットした方の話が、

明日の21:00にあがってきますので・・・。



では今日はこのへんで・・・

いい夢を・・・。」







デビロはモニターの手前にあるカーテンを閉めた。



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