ジュウシチネンゼミ(3)

創作の怖い話 File.254



投稿者 でび一星人 様





「ハァ・・・ハァ・・・。」


・・・疲れた・・・。 こんなに疲れるものなのか・・・。


 僕は真っ暗な夜道を歩いていた。

もう夜中の三時くらいだろうか?


 
 
 雪村さんが、ベッドの中で僕の手を握って来た後、

僕に意味深な事を聞いてきた。

「・・・ねぇ。 村井君は、私の事、どう思ってるの?」

僕はテンパった。

いや、誰でもテンパるだろう。

「た、大切な友達だよ。」

としか答えられなかった。

「そうか・・。友達か・・・。 友達と、こんなところに泊まるの?」

自分の手が汗ばんできたのがわかった。

それが悟られるのが嫌で、僕は雪村さんの手を振り解いた。

「あ・・。」
・・・と、雪村さんは言って、それから無言の時間が続いた。

・・・勘違いをされたかもしれない・・・。

でも、僕はどう動けばいいのかわからなかった。

雪村さんを傷つけたのかもしれないし、僕の思いすごしかも知れない。

ただ・・・。

あの状況に、僕の心は耐えられなかったのかもしれない。


僕はベッドから出た。

そして、雪村さんにこう言った。

「・・・ゴメン。雪村さん。 僕、やっぱり帰るよ。」

「・・え?なんで?もうバスも電車も無いよ?」

「やっぱり、こういうの良くない。」

僕は服を急いで着て、「雪村さんは、ゆっくり休みなよ。 じゃ、また明日」

「ちょ、ちょっと待ってよ!村・・・」


バタン。


 僕は部屋を出て、フロントのおばちゃんに一声かけてラブホを出た。

おばちゃんは「若いから、ケンカもするわねぇ。」と言ってみかんをくれた。


 そんな感じで、今僕はとてつもない距離を、家まで歩いて帰っている。



 家に着くと、もう明け方の五時を回っていた。

コソっと自分の部屋に行き、

制服を着たままベッドに横たわった。

なんだか急に落ち着いてきた。

(雪村さんに・・・わるい態度とっちゃったかな・・・。)


明日謝ろう。

そう思い、2時間ほど仮眠をとった。




 超重たい体を引きずり、馴れないバスで学校へ行く。

お金を出して、こんな満員のバスにのるなんてどう考えても損だ。

やはりマウンテンバイクは素晴しい乗り物だ。

そんな事を考えていると、あっという間に学校に着いた。


今日はバスだったので雪村さんには会えなかった。

明日、会った時に謝ろう。

そう思っていた。



・・・だが、僕が雪村さんに謝る日は訪れなかった。

次の日の朝、

いつもの時間なのに、雪村さんと僕は会わなかった。

次の日も、その次の日も・・・。


やはり、あの一軒を気にしているのだろうか・・・。

家を調べて謝りに行こうか?

そんな事も本気で考えた。





 翌日。

全校生徒を集めて、緊急集会が開かれた。

各々ダルがりながらも、体育館に並ぶ。


 その場で校長先生から、驚くべき事を聞かされた。


「えぇ・・。前からあまり学校に来られていませんでした、

二年C組の、雪村 桜さんが、 今朝お亡くなりになりました。」

「えぇ!」

僕は思わず声を出してしまった。

一斉に他の生徒が僕を見る。

「す、すいません・・・。」


驚きも大きかったが、思春期なので恥ずかしさも大きなものだった。


 
 イキナリの展開で、僕は混乱して【悲しさ】というものを感じられなかった。


雪村さん・・・。

雪村さんと出会った日

自転車の鍵を渡してくれた雪村さん

映画を見に行った雪村さん・・


そして・・・手を繋いだ、あの夜・・・。


 その雪村さんの・・・死・・・。


まさか・・・まさかこんな唐突に死んでしまうなんて・・・。



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