ツンデレラ(4)

創作の怖い話 File.251



投稿者 でび一星人 様





体重は、雪夜君と出会った頃とくらべて18`も減った。

最近髪の毛の抜ける量が多くなってきた気がする。

 触られるだけの仕事では、薬代や、雪夜君に会いに行くお金が足りず、
【もっとハードな仕事】をする事となった。

なにやら薄暗い部屋で、オトコの人を最後まで世話するお店だ。

 これも雪夜君のため・・・。

私の心の安定の為・・・。


私は頑張った。


 最近胃の調子も悪い。

必ず1日に数回はトイレに行って吐いた。

 
 雪夜君は相変わらず、優しかった。

この薬も、だんだん効かなくなってきた事を話すと、

「じゃあ、ストローか何かで鼻から吸い込むと良いよ。」って、

優しく教えてくれた。

 雪夜君は、いろんな事を教えてくれる・・・。

私の心を癒すいろんな事を・・・。


あぁ。

雪夜君は私の全て・・・。







 ある日の朝、仕事に出勤してきた時に、皆が変な視線を私に向けていた。

自分の席に座り、机を掃除していると、部長がやってきて、

「下山君・・ちょっと。」と言って、会議室で話をされた。


 どうやら、夜の仕事をしている事が会社にバレたらしい。


「・・・会社として・・・黙認するワケには行かないから・・・。」


私はクビになった。

 その日のうちに机を整理して、いらないものは捨てて、私は会社を後にした。


 でも、いいわ。これで。

アッチの仕事で長く働いたほうが、稼げるもの・・・。


会社を出たところで、

「ちょっと!下山ちゃん!」と、私を誰かが呼び止めた。

振り向くと、そこには浜根さんが居た。

「下山ちゃん。 お金で困ってるのか? なんで相談してくれなかったんだよ?」

・・・なんで浜根さんが私にこんな事を言うんだろう。 関係ないのに・・・。

「・・・今まで、いろいろとお世話になりました。」

私は浜根さんに一礼した。

「待てよ!下山ちゃん!」

浜根さんは私の腕を掴み、一枚の紙を手渡した。

「オレの携帯番号だから。 もし何かあったら連絡頂戴よ。

オレ・・・下山ちゃんの力になれる事あったら協力するからね。」

・・・息が臭い・・・。

何を言ってるんだろう・・・この人は・・・。

関係ないのに・・・。

私は再度一礼し、駅に向かった。

駅のゴミバコに、さっき浜根さんにもらった紙を捨てた。

私には雪夜君が居るから・・・。

こんな紙をもし見られて勘違いされたら面倒だから・・・。


 



 鼻から吸い込むヤリカタでも、あまり効かなくなった。

雪夜君は、液状に溶かして、注射器を使う方法を教えてくれた。

 どうやら、昔本で読んだ【麻薬】そのもののヤリカタだが、

私はコレ無しでは耐えられなくなっていた。



 仕事だけでは追いつかず、いろんなところで借りた借金も200万ほどになってしまった。

それでも、お金が必要なので、電信柱に張り紙してるところから借りた。


 1日1日を乗り切るのが精一杯だった。


 




 髪の毛も、半分以上が抜け落ち、頻繁に尿漏れするようになった。

目の下がくぼみ、化粧ではもう隠せない。

 水も電気もガスも止められた。


お金ももう借りる所が本当に無くなったところで、雪夜君は別れを切り出した。

私は、もう深く考える力も残って無く、

その現実を受け入れる事しか出来なかった。





 家賃を払えず、マンションにも居る事が出来なくなり、

こんな外見になったので、働ける場所も無くなった。


 お金が無くなり薬を買う事が出来なくなった為、

ひどい発作が時折私を襲う。


 寒い・・・


     孤独・・・



 皮膚がズレる感覚もする・・・。



 私の姿を見て、子供が指をさす。


それを制する母親


 
 ボロボロになった服で町を彷徨っていると、見覚えのある顔が視界に入った。

「ぁ・・ハ・・・浜・・根・・・さん・・・。」

浜根さんだ。


『オレ・・・下山ちゃんの力になれる事あったら協力するからね。』


フイに、昔浜根さんが言ってくれた言葉を思い出した。

「ぁ・アアエサァ・・ン・・・!」

歯がほとんど抜け落ちてしまい、上手く言葉を発する事ができなかった。


私はフラつく足で浜根さんに駆け寄って行った。


浜根さんはこちらに気付き、私の目を見た。

そして、





「ひぃ!バ、バケモノだ!」


と言って、私を突き飛ばして逃げて行った。


 私は電柱に頭を打ちつけた。


そのまま私の体は動かなくなっていった。

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【クラブ CO2】 では、 雪夜と受付に居る中年の男が話をしていた。

「雪夜君、お疲れ。 はい。今月分。」

そういって、中年男は札束の入った袋を雪夜に手渡す。

「あぁ。ありがとうございます。 っていうか主任、辞めてくださいよ。仕事以外でその名前で呼ぶのは・・・。」

「ハハ。ごめんごめん。 お客さんの居る時の癖でね。 林田君。」

「いえいえ。 そんなに謝ってもらわなくても(笑)」


「ところで林田君、最近ずっと来てたアノ子、最近見ないけど、どうしたの?」

「あぁ。あの静香って子ですか。 アイツはもうだめですね。 

いっぱいいっぱい絞りとって、もう何も残っちゃいないですよ。」

「・・・相変わらず、ひどいねぇ。林田君・・・。 君はいつもトコトンまでしぼりとるからねぇ・・・。」

「ええ。これがオレのヤリカタっすから。 昼間ブラブラして、OLを狙う人ってあまりいませんからね。

楽なもんっすよ。 

最初の数週間、

普通の仕事してるフリして警戒心解いちゃえば、後はなんでもいう事聞いてくれますからね。

それに、いくらでも夜の世界には引っ張ってこれますから。意外と金になるんスよ。

それに、【ツンデレ】とか言って、顔色使い分ける女は得にやりやすいですねぇ。

一度混乱させちゃえばそれで終わりです。

男が全てになる。」


「・・・まったく・・・怖い男だねぇ・・。まるで悪魔のような冷酷さだね・・君は・・・。」


中年男がそう言った時、林田の顔色がイッキに変わった。

「・・・主任、いくら主任でも、ボコりますよ? 今、悪魔って言いました?」

「あ・・いや、スマン林田君。ついはずみで。」

林田は大きく深呼吸し、

「・・・あ、いえ・・・。スイマセンでした。 【悪魔】なんて言葉、もう使わないでください・・・。」

そう言って、林田は店を出て帰って行った。


(本当に・・・。異常に頭も切れるし・・・恐ろしい男だ・・・。 林田 平・・・。)



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