ビデオテープの男

創作の怖い話 File.25



投稿者 ストレンジカメレオン 様





目を覚ますと寂れた病院の一室でオレは寝ていた。

窓は無く、無機質な白い壁に少しヒビが入っている…

頭が痛い…

何故オレはここにいるのか…全く記憶がない…

(一体何が起きたんだ…)

オレは必死に思い出そうとするが思い出せない。

自分が大学生だったのは覚えている。

しかしそれ以外思い出すことが出来ない。

とりあえずオレは病院の外に出ようと思い、立とうとする。

しかし、足が言うことを聞かない…それどころか立とうとした瞬間、足全体に激痛が走った。

(くそっ!!なんなんだ!オレは事故にでも遭ったのか!?)

オレは外に出るのを諦めて、時間が過ぎるのを待った…

一時間 二時間 三時間…刻々と時は過ぎていく。

しかし誰かが部屋に入ってくる気配は無い…物音一つすらしない…

気味が悪くなったオレはなにか部屋に記憶を呼び戻すものがないかどうか探してみた。

ふと横を見るとテレビがあり、その台の下に一本のビデオテープが置いてあった。

オレはそのビデオを気になり、誘われるかのようにビデオを手に取り、デッキにセットした。

そしてビデオを再生した。

一つの部屋が映し出される。

部屋の真ん中に椅子が置いてあるだけである。

突然 男の叫び声が聞こえる。

「離せ!!やめろ!!やめてくれぇ!!」

喉が潰れてしまうほどの声を張り上げている。

画面の中に、顔に布を被された男が運ばれてきた…

運んでいる男たちは、仮面をつけている。

嫌な予感がする。

この顔に布を被された男はどうなってしまうのだろうか…

必死な抵抗は空しく、みるみるうちに男は椅子に手足をくくりつけられていく…

そして仮面を付けた男の一人がナイフを取り出した…

そして顔に布を掛けられている男、目掛けてナイフを突き刺した。

ナイフは男の肩に突き刺さる…

「ぐぁああーーーー!!!」

他の仮面の男たちもナイフを取り出した。

「うっ…」

吐き気をもよおしたオレはビデオを止めた。

「なんなんだ…このビデオは…実際に人を刺してたぞ…この病院、気味が悪すぎる…」

早くここを出たいと気持ちとは裏腹に時間だけが過ぎ、それ以外はなにも変わらなかった…

時間が経ち、ビデオの続きが気になりだしたオレはまたビデオを震える手で恐る恐る再生した…

さっきの続きが映し出された。

仮面の男たちが次々と椅子に座らされた男にナイフを突き刺していく…

男は異常な叫び声をあげている…

精神崩壊を起こしてしまってるかのようである…

布のしたから血と液体が垂れている…

最後は血まみれになり、叫ぶのを止めてしまっていた。

体を小刻みに痙攣させるだけであった。

ここでビデオは終わった。

(なんでこんなビデオが置いてあるんだ…明らかに法から外れたビデオだ…この病院一体!?)

次の瞬間

「コン コン」

誰かが病室のドアをノックした…

「コン コン」

あのビデオを見てしまったせいかオレはノックに対して恐怖を感じ返事が出来ずにいた。

「ガチャ」

オレは寝たふりをした。

誰かが部屋に入ってきた。

「意識はもどりましたか?起きてますか?」

男の声がオレに話しかけてくる。

「……………………」

また静かな空気になる…

「どうやら一回は起きてるみたいだな。ビデオがセットしてある…

ということはあのビデオを見たのか。じゃそろそろかな」

(何を言ってるんだ、この男は、医者じゃないのか!?)

「そろそろこの部屋から出しても大丈夫だろう!だいぶ回復しているはずだ!」

(この男はやはり医者か!?退院出来るってことか!?)

「カツッ カツッ」

また部屋に何人か入ってきた…

そして入ってきた人間たちはオレが寝ているベッドごと運びはじめた。

車輪付きのベッドであった。

オレは薄目を開け、周りの様子を見た。

部屋を出たら寂れた廊下であった…

蛍光灯の光も弱い。

廊下の奥にあるエレベーターの中に入った。

どうやらここは地下だったらしい…

エレベーターはどんどん上の階に上がる。

そして何階だろうかエレベーターが止まった。

地下に比べるとこの階はずいぶんと華やかである。

(もしかして病院じゃなかったみたいだな…何かの施設か…)

突然、オレはこの階の景色に見覚えがあるのを感じた。

(あれ、オレは以前ここに来たことがあるぞ)

そんなことを考えている間にもベッドは奥へと運ばれる。

そして奥の部屋へと運び込まれた…

オレはベッドから無理やり立たされた。

目を見開くとやはり見覚えのある部屋…

部屋の真ん中には椅子が置いてある。

オレはそこの椅子に座らされ、顔に布を掛けられた…

この瞬間すべての記憶が戻った…

ビデオに映っていた男は…

オレだ……………



★→この怖い話を評価する



[怖い話]


[創作の怖い話]

[PR]消防士ヘッドライト