飛び降りる(3) |
創作の怖い話 File.244 |
投稿者 でび一星人 様 |
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三階 三階のへやは空っぽだった。 「・・・誰も居ないじゃないか?」 『フフ。 よ〜く見てごらん。 今の君なら見えるから。』 おれは目をこらして見てみた。 「ん?」 うっすらと、女の人が窓に浮かび上がった。 ・・・いや、窓の中・・・部屋に立って、ずっと外を眺めているようだ。 「あの女性は・・なんで半透明なんだ?」 『フフ。 あの女性はね、10数年前に、自らの手でこの世を去った女性さ。』 自らの手で・・この世を・・・。 何だ・・・ 何が言いたい・・・。 オレと・・・同じとでも言いたいのか・・・? 『彼女は、男に捨てられたんだ・・・。 それを苦に自殺。 それ以来十数年、 ずっとずっとずっと、 その時の苦悩が消える事なく、あそこにずっと居座り続けている。 ・・・もちろん、 部屋に入ってこようとする邪魔者には容赦なく攻撃するみたいだよ。』 ずっと苦悩が続く? 自殺とはそういうものなのか? この苦悩・・・つらさから逃げたくて飛び降りたのに、 この辛さは消えないのか? ずっと続くのか? 『フフ。フフフフ。 口数が減ってきたね。 いろいろ考える事があるんだろう。 それも大切な事だよね。 さ、次は二階。君の部屋だった場所だ。』 オレの部屋・・・。 二階 二階の・・・オレの部屋だった場所の窓が、 ゆっくりゆっくりと縦スクロールされながら見えてきた。 晴美の顔が、少しづつ・・・少しづつ見えてきた・・・。 『・・・この女性はね。 旦那と2人、この部屋で生活していたんだ。』 知ってるよ・・・。 オレの部屋なんだから・・。 なんで、この声の主はわざわざそんな説明をする・・・。 『ある日、旦那が会社に行ってる間にね、 高校時代の同級生でもあり、旦那の親友でもある牧田という男が尋ねて来たんだ。』 ・・・辞めてくれ・・・ 聞きたくない・・・。 『牧田という男はね、 家に入れてもらい、お茶を出してもらった。 そして悩み事が有る。と、相談したんだ。 この晴美さんに。』 ・・・何が悩み事だ・・。コイツらは・・・コイツらは・・・。 『次の瞬間、牧田は晴美さんに襲い掛かった。 嫌がる晴美さんにね。』 ・・・何・・・? 『・・・そう。 晴美さんはレイプされたんだよ。 その牧田と言う男にね。』 ・・・レイプ・・・? 『絶望の中、晴美さんは、牧田に抱かれた。 この現実が信じられなかった。 そんな状況の中、さらに不運は続いた。 この時間に帰ってくるはずの無い旦那が、 今日に限って帰ってきたんだ。 そしてその現場を見られてしまった。』 ・・・何だって・・・。 『晴美さんは、誤解を解く為に必死に旦那を呼びとめて説明しようとした。 それはそうだろう? 自分の最も愛し、 自分の最も大切な存在なんだから。 でも、旦那は聞く耳を持たなかった。 →飛び降りる(4)へ ★→この怖い話を評価する |
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