でびるーるすまん(8)

創作の怖い話 File.239



投稿者 でび一星人 様





そういえば、ここで働き出してからでび呂さんの姿を見ない。



私は店長に聞いてみる事にした。



「ん?でび呂さん?誰それ?」




?????




店長からの返事は、思いもよらない言葉だった。




「えっ?ほら、私を最初ここに連れてきた人…。


でび呂さんって、ここのオーナーじゃぁないんですか???」



驚き聞き返す私に店長は、



「でび呂…っていうんだあの人。

ぜんぜんオーナーじゃないよ。


たまにああやって女の子をスカウトしてきてくれる人。


名前もしらなかったよ…変な名前だね…」





…でび呂さん…。


…私…うまく騙されたのね…。



…でも…



…それでも結果的に、



私はでび呂さんに感謝している。



あの日、あの時、でび呂さんがこうやってここを紹介してくれなかったら、




私は今のように心の満足を得れられなかったと思うから。



…旦那には、少し罪悪感があるけどね…。



…でも、これもローン返済が終わるまで!!!



それまでの我慢だから…。


…旦那…


…旦那…。



どうしたんだろう。



私、今絶対旦那に恋してる…。


はやく帰って旦那と添い寝したいな。


…そしていっぱいいっぱい尽くして、

旦那に感謝されたいな…。







私は幸せいっぱいです!!!

「はぁ…はぁ…」



タッタッタッタッタ…。


おれは走る…。


人ごみを掻き分け、オレは走る。



…くそう!


一体なんでこうなってしまったんだ!!!


パフェか!

あのパフェだ!!!


パフェが食べたくて、喫茶店で待ちすぎて、

予定より時間が遅れて、



これから行かなきゃならない接待の待ち合わせに遅れそうだ!!!


くそう!!!!



この契約は今後のわが社の命運を握っていると言っても過言じゃない!!


絶対に成立させなきゃいけない!!!


まにあえーーー!!

まにあってくれええええ!!!




…うぐっ!!!!




万事休す。




パフェを急いで食べたのがいけなかったのだろう。



おなかが限界に達した。


オレはトイレに駆け込んだ。



それは接待の終戦を意味する脱糞だった…。






とぼとぼ…。


トイレ後、


オレは肩を落とし待ち合わせ場所に辿り着いた。




キョロキョロ…。



「…居ない…」


怒って帰ってしまったか…。




物凄い絶望感のオレ。


…と、その時だった。


ポンポン。


後ろから誰かがオレの肩を叩いた。



「…すいません。待ちましたか?」




「あっ…アナタは?」



…なんという幸運!!!


得意先の接待相手が、オレよりも遅刻していたのだ!




ツイテル!!


オレ、ツイテル!!!!



「あっ、いえ!全然待ってませんよ!

あの、私○△商事の桜田と申します」


オレは頭を下げ、名刺を差し出した。



「ヒョッヒョ…どうもご丁寧に。

…あっ、すいません、ワタシ、名刺を忘れてきてしまったようで…」


「…あぁ、そ、そうですか。

ハハ。では、また近いうちにもう一回飲みに行きましょう。

その時にでも!」


「ヒョッヒョ。

アナタ、面白い人ですねぇ。

ワタシ、気に入りましたよ〜〜」



…よしっ!!

好感触!!!




その後、オレは会社経費で二軒ほど相手を接待した。




接待相手とは話しも合い、仕事の話も良い方向に進みそうな雰囲気!!!



やったぞ!!!


出世も夢じゃない!!!!

二軒目の店を出た頃には、オレも接待相手もかなり酔っていた。



「ふぅ…ひょひょ…。


桜田さん、アナタとは気があいますねぇ。


今日は楽しかったですよぉ」



「そ、そうですか…ありがとうございます!!!」



「ひょひょ…。

あ、そうだ桜田さん、三軒目はいかがです?」



「えっ??三軒目?」


オレはサイフをチェックした。


会社で落とせる経費の幅は既に超えていた。


この先は自費!!!




「う…う〜ん…。

すいません、どこかコンビニありますかね?


ちょっとお金下ろしてきます」



「ヒョッヒョッヒョ!

いえいえ桜田さん。

ここまでアナタにばかり払わせて悪いですから、次はワタシに払わせてください」



「えっ?いいんですか?」



「ヒョッヒョッヒョ…okですよ」





酔いも最高潮だったオレは、接待相手に連れられて、少し寂しげなところにある豪華な建物にやってきた。



「ヒョッヒョ。ここです!ワタシの行き着けのお店なんですよ。


やっぱり最後は、こういうところで締めませんとねぇ」



「…えっ?こ、ここって…」





…少し豪華な作りだが、オレも大人だ。


看板を見ればすぐにそこがどういう店か理解した。



「あっ、わ、私、妻が居るんですよ。


だからちょっとこういうお店は…」



意外とオレは硬いところがある。


っていうかぶっちゃけ妻をかなり愛している。




「ヒョッヒョッヒョ…。


…桜田さん。


アナタ、出世できませんよ?」


「…えっ?」


「…男たるもの、こういう店に平気でいける器が無いと、大きな事なんて出来やしません。


…桜田さんには、その器があると思っていたのですが…」



…ヤバイ…。


ここで怒らせてしまっては、ここまでの苦労が…。


「わ、わかりました!い、行きます!お供しますよ!!!」


…ま、まあいい。


入るだけ入って、何もしなければ良いだけの事。



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