でびるーるすまん(4)

創作の怖い話 File.235



投稿者 でび一星人 様





…でも、奥さん安心してください。


私はね、さっきも言いましたが奥さんを陥れる為にこうやって現れたのではありません。


…奥さんを救うために…現れたのですよ』



…私を救う…?



『ヒョッヒョ。


とりあえず、顔を上げてください。


そして、テレビごしではアレなので、実際に会ってお話しましょう。


…ドアポストに、私の名刺を入れておきます。


そのウラに、待ち合わせ場所を書いておきますので、そこに来てください。



…そこで、奥さんの欲求もお金の問題も解決する方法をお教えしますよ…。


ヒョーーーッヒョッヒョッヒョッホーーーー!!!』




ザッ…


  ザザッ…


ザアアァアアーーーーー…




「…!?」



気が付くと、テレビは砂嵐になっていた。




どうしたんだろうとテレビリモコンの【表示】ボタンを押すと、いつのまに代わったのだろうか、

今までついていたチャンネルはどこの局も入っていないチャンネルだった…。

コトン…。





と、その時、またドアポストに何か入る音がした。





見に行ってみると、さっきテレビで言っていた通り名刺が入っていた。





【心の凹み、凸にします…   でび呂 一蔵】



「…さっきの…やっぱり夢じゃなかったんだ…」




私には、頼るべきものはこの【でび呂】という人しか居ないと思った。




すぐに服を着替え、名刺のウラに書いてある喫茶店に向った。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


カランコロンカラ〜ン…。



喫茶店のトビラを開けると、中にはカウンター席があり、その奥にヒゲもじゃのマスターらしき人が居た。

「あ、あの…どうも…」


私はおそるおそる、ひたすら皿を磨いているマスターに挨拶をした。


「…」


…しかしマスターは無言…。



「と、とりあえず座らせてもらいますね〜」


「…」


無言のマスターを警戒しつつ、私はカウンターに腰を降ろした。











カランコロンカラ〜ン。


と、その時、また入り口のドアが開く。



「あぁっ!でび呂さんっ!」


入ってきたのはでび呂さんだった。


私はこのマスターと二人きりの空気から解放され、安堵した。




「ひょっひょ。

おやおや奥さん、早かったですねぇ」




でび呂さんは私の隣に腰掛け、マスターにコーヒー二つを頼んだ。




「ヒョッヒョ。

奥さん、どうですこの喫茶店、

ワタシのお気に入りなんですが」



でび呂さんは口をニィ〜っと開き、笑いながら私に言った。

「そ…そうですねぇ…」


私はキョロキョロと喫茶店の内部を見渡した。



もう何十年もやっているのか、喫茶店の中はけっこう汚かった。


…しかし、気になる事があった。


喫茶店の壁には、やたらとGacktのポスターが貼ってあった。


…いや、Gackt以外にもドレスを着た男の人達のポスターが貼ってあったが、私の知らない人達ばかりだった。


「や…やたらとGacktさんのポスターが多いですね…」



「ヒョッヒョ…。

奥さん、よ〜く見てください。

あのポスターはGacktでくくってはいけませんよ。

あれはマリス・ミゼルのポスターです」


「マ…マリス?

あぁ。

Gacktさんが昔所属していた…」


「ヒョッヒョ…

そう。ここのマスターはね、マリスが好きなんですよ。

だからこの店の名前、【喫茶・魔り巣】っていうんですよ」



…喫茶魔り巣…。



「そ、そうですか…ステキなお名前ですね…」


「ヒョッヒョ。

そうでしょうそうでしょう。


…さて、小汚い店のことは置いといて、さっそく本題に入りましょうか」



コーヒーを注ぐマスターの手がピクっと動いた。

「…奥さん。


アナタ、感謝される事に餓えているんですね。


…そして、これから払っていかなきゃならない多額のローンにも悩んでいる…。


大きくこの二つの悩みがありますね?


違いますか?」



…図星すぎる…。


「そ…その通りです…」


私はションボリしながら答えた。



「…ヒョッヒョッヒョ…。


奥さん、そう肩を落とさずに。

…実はね奥さん、


簡単な解決方があるんですよ」


「…えっ?」


私は思わず顔を上げる。


「ひょっひょっひょ…。


感謝され…しかもお金も手に入れる…。

…その二つを満たす方法はね、


…働く事ですよ」



「は…働く??」


「そう。働く事です」


…何を言うかと思えば…。


「で…でび呂さん…お言葉ですが、私はね、

専業主婦なんです。


そんな働く時間なんてとてもとても…」


「…果たして本当にそうかな?」


「…えっ?」



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