でびるーるすまん(2)

創作の怖い話 File.233



投稿者 でび一星人 様





…ゴトン!





…と、その時、



玄関のポストに何か郵便物が届いた音がした。



「…何?一体…?」



通販番組中にテレビの前を離れるのは心外だけど、


何が届いたかが気になる為、私は見に行く事にした。






…ガコン。



ドアポストから郵便物を取り出す。



「…ん…クレジットカード会社からだわ」




…通販のローンの支払いは、全てカードで済ませている。


その詳細だろう。


私は封筒を開けて中を見る。



「…な…何これ!!!


じゅ…十万えん!!!!?


今月だけで十万円ってどういう意味よ!!!!」



私は急いでカード会社に電話をする。



「もしもし!!私は月々1000円くらいのやつしか買ってないのよ!!

それが何よ!!今月だけで10万円って!!!」

文句を言う私に、カード会社の受付嬢は冷静に応える。



「はい。ですがお客様、

月々1000円のものを100個ご購入されますと、10万円になってしまいますが…」





「何!??

私、そんなにいっぱい買ってないでしょ!?」



「…いえ…記録を見ると…」




私は家の中を見渡す。


…そういえば…


アレも…


コレも…


ソレも…



よくよく考えてみれば、この家にあるものは通販で買ったものばかりだ…。




「何でしたらお客様、もっと詳細が載った書類をお送りしましょうか?」



「えっ…あっ…いや、

ホホホ。

いえ、こっちで調べるから良いですわよ。

ホホホホホ」


「…さようでございますか…。


ほかに何かご質問等ございますか?」


「い、いいえ。

ホホホ。


どうもありがとう…」








  …ガチャッ…。





…困った…。



私はきっと、感謝される事に夢中で、手当たり次第買いまくってしまったのね…。




もう一度部屋を見渡す。



…やっぱり…よくよく考えてみたら、月々10万はいってるかも…。




「…どうしよう…」



私はカード会社から送られてきた書類を見る…。



…月10万…。


しかもこれが何年か続く…。




旦那の給料、家賃、生活費…。


全て計算してみても、


…こんなに払っていけない…。







…私はこの先どうしていこう…。



途方にくれながらも、


自分の精神を安定させる為、私は通販番組を見る事にした。

「…ん?」



番組に、何か違和感を感じた。



「あれ?なんだろう…いつもとセットが違ってるように見えるけど…」





通販番組のセットは、いつもとちがいなにやら薄暗い雰囲気のものとなっていた。




そしてじっと画面を見つめていると…




『ヒョーーーッヒョッヒョッヒョーーー!!!』




画面左端から、変な笑い方をする黒づくめの男が歩いてきた。



「…な…なによこの男…


いつものイケメンアドバイザーじゃ無いじゃない!!!」



私はテレビに文句を言う。




『ヒョッヒョッヒョ。


テレビの前の奥さん!


すいません!


イケメンじゃなくて!!

ヒョッヒョッヒョ!』



!!!!???


何?



この男…今の私の声を聞いていたような反応…。


…ま、まさか…。


たまたまよね…。



『ヒョッヒョッヒョ!!!

奥さん!!

そう!


アナタですよ奥さん!!!』



「わ…私…?」

私はついつい反応し、自分の顔を指差し、テレビに向って話していた。



『そう!アナタ!


そこのキレイなアナタですよ!』



「んまあ!!!」


嬉しさの度合いが、驚きの度合いを上回り、


私はとりあえずテンションが上がった。



テレビの中の男は尚も話を続ける。





『奥さん!!!

アナタ、日頃の夫婦生活に満足していますか?


旦那に不満等ございませんか?


奥さん!!!

アナタ、常日頃から【感謝】に餓えているんじゃぁございませんか!??』




…感謝…。


図星だわ…。



私は静かに頷いていた。



『そうでしょうそうでしょう』


テレビの中の男も、一緒に頷いている。



『…申し送れました。


私の名前は【でび呂一蔵】。


世の中には心の凹みを抱えている人がたっくさん!!!


その凹みを凸みにしてテトリスするのが私の生きがいなのです!!!』




「テ…テトリス…?」



…この男は何を言っているのだろうか…

「な、何よテトリスって!!!」



私はテレビの中の男に叫んだ。



『ヒョッヒョッヒョ…。


いえいえ奥さん、


そこはサラっと流すところですよ。


そこにイチイチ反応していたら話しが後編で終わらなくなりますから』



「そ、そう…ご、ごめんなさいね」


『いえいえ。


…さて、本題に入りましょう。


奥さん!アナタ、今の日常に満足していないでしょう?


っていうか、アナタ感謝される事に餓えている!!!』



…何?



何なのこのテレビの中の男は…。


…図星じゃないの…。


っていうか、なんでテレビの中の男と私話しができるの…。


…頭がおかしくなっちゃったのかしら…。





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