でびるーるすまん(1)

創作の怖い話 File.232



投稿者 でび一星人 様





ワタシの名前は、でび呂一蔵

人呼んで、でびる一ルスマン

この世は老いも若きも、

男も女も

心の凹んだ人ばかり。

そんなアナタの凹みを、

凸みにして、

それでテトリスでもやりましょう。


え?


観覧代?

いいえ、お代は一円も頂きません。

読者様の喜ぶ顔が見られたら、私はそれで本望です。

ひょーーっひょっひょっひょっひょー

・・・


・・・


・・・さて、今宵のお客様はこの女・・・。






【桜田 院子(36)主婦】



ヒョ〜〜〜〜〜ッヒョッヒョッヒョ〜〜〜〜!!!!

『なんと!このハンガーが5点セットで3万円!!!』


『ええ〜っ!!!安っすい!!!

それだけすべり止めバリバリのハンガーが、五つで3万円ですってえ!!!


36回払い計算すると、利子入れても一ヶ月千円以下!!!

これチョー熱いっすね!!!』




「…あらぁ…このハンガー良いわねぇ…。

それに一ヶ月千円以下なんて安っすいわぁ」





私の名前は桜田院子。


主婦。


平日の午前中はいつもこんな感じで通販番組にくびったけ。



旦那?

旦那は仕事。


朝七時に家を出て、夜10時まで家には帰ってこない。


…ほんっと、

仕事が大変ってのもわかるけど、もうちょっと構ってくれって感じ。


でも、まあ居たら居たでウザいんだけどね…。







ピッポッパ…



私は今日も電話をかける。



トゥルルルルルル…。


トゥルルルルルルル…。



プッ、


『はいもしもし!球市テレフォンショッピングセンターですが!』


「…あぁ。テレショップの人?

今テレビでハンガー見たんだけど」


『あぁ!その声は桜田さんですね!!!』


「…えっ?何よちょっと、なんで名前わかるのよ?アンタストーカー?」



『ハッハッハ。ケラケラケラ。


いえいえ、そんなんじゃないですよ。

桜田さん、週1回は商品ご購入の電話くださるじゃないですか。


それで覚えちゃったんですよ。

いつもありがとうございます』



「あらいやだわ。


ホホホホホ」

『で、桜田さん、ハンガー五点セットご購入でOKですね?』


「ええ。買うわ。

…でも…またいつもみたいにサービスして下さるんでしょうね?」



『ハッハッハ。


いやぁ。桜田さんには負けますよ。


いいですとも。


ちゃんと、いつものように万能まな板お付けしますよ!』




「んま!なんて優しいの!


ありがとう!!!


ハンガー五点セット、二セット買うわ!!チョー気分良いから!!!」



『マジっすか!

ありがとうございます!!!


…では、いつもの住所にお支払いの書類と商品をお届けさせていただきますね…』




…あぁ…。


今日も買ってしまった…。



でもいいの。


良い品物を、月々1000円以内で買っているんだもの!



それに…



…この【感謝】される感じがたまんないわぁ…。







時計を見ると、もう12時前だった。


「…あぁ。もうこんな時間。

お昼ごはんにしなきゃ…」




今日は月曜日。

月曜日は和食の日。




私はソバ屋に出前の電話をする。



「すいません、てんぷら御膳一ついいかしら?」


『ヘイ!いつもありがとうございやす!!!』

12時半。


私は健康番組を見ながら、


「やっぱり前の色黒司会者の方がよかったわぁ〜」


などと独り言を言う。


もちろん食卓には色とりどりのてんぷら御膳。








ふぅ〜。

食った食った。



13時前には食事も終わり、食器を丁寧に洗い玄関前に出す。


と、ちょうど出前の人が食器を取りにきた所だった。


どうやら私の食べる速度は見透かされているらしい。



「…あぁ。奥さん!いつもキレイにありがとうございます!

…でも、別に洗わなくても良いのに…」


「ホホホ。良いのよ。

これはレデェーとして当然の事ですわ」


「ヘヘ。ありがてえ。またお願げいしやす!」


出前の人は深々とお辞儀をし、食器を持って帰っていった。



…あぁ…。


また私は感謝をされた…。


…このゾワゾワって感じがたまんないわぁ…。















夕方。





私は旦那の餌を作る。



今日はメンドクサイので適当に野菜やら肉を炒めた。








「…ただいまぁ」



夜10時12分。


旦那が帰ってきた。



「お帰り。ご飯、ラップしてあるから温めて食べて。


ご飯はジャー。

味噌汁も自分で温めてね」




「…あぁ…」



旦那のそっけない返事。


…旦那…。


結婚当初は良かった。


旦那は私がすることすること全てに感謝してくれた。


毎日が快感の嵐だった。




…でも、今はどう?

全ての事を私がやって【あたりまえ】みたいに思ってる…。



アンタのご飯、いつも誰が作ってると思ってるの?


洗濯は?


部屋の掃除は?






そんな感謝の気持ちが無い相手に、


私はいつもいつも色んな事をやっている…。


…あぁ…。




私ってなんでこんなに不幸なの…。




「院子ぉ、明日のパン買ってきといたから」


「…あぁ、ありがとう」



フン!!

何よ!!


私はいつもいつもアンタの色んな事をしているのに、


アンタが私にしてくれる事は決まって朝のパンを買ってくる事くらいじゃない!!!




そんなんで私がやってる事とつりあいがとれると思ってるの!!!



なんて都合の良い考え方よ!!!!





…考えれば考えるほど腹が立ってきた。






私はイライラするので先に寝室に行って寝た。





−−−−−−−−−−−





「…なぁ、なぁ院子?」


「…ん…」


…なんだ…



旦那が私を揺すってる…。


時計を見ると、夜の12時だた。


「…ん…何?」


けだるそうに私は返事をする。

「…なぁ、院子、最近ご無沙汰だろ?今日どう…?」



…今日どうだって…。


何よ!!!


私にはほとんど感謝もしないくせに、


アンタは私の体で自分の欲求を満たそうとしているの!!!!?



私はアンタのオナマシーンか!!!



あああああああああああ!!!!





「…ゴメン、私疲れてるの…」




私は旦那に背中を向けた。



「そ…そう…」



旦那は寂しそうに私から少し離れた。



…そう。


この旦那は、強引になにかしてくるような旦那じゃない。

無理強いはしない。



私はそれをよく知っている。


だからこんな風に旦那の顔も見たくないときは比較的楽だ。







ウトウトと、私は眠りについた。







チュンチュン…



   チュンチュン…。




朝が来た。



私はムックリと起き上がる。



時計を見ると9時。


あぁ。今日もガッツリ眠ってしまった。






リビングに行くと、旦那の姿は当然無く、洗濯機の前には旦那の汚ったない靴下やらパンツが入っていた。




「もう!!!自分で洗えよ!!!」


家に一人で居るとついつい独り言を言ってしまう。



私はそんな愚痴を言いながらも、旦那の衣類を洗う。



なんだかんだ言って、ちゃんとやる私は偉いんだ。






朝食のパンを食べ、いつものように通販番組のチャンネルを付ける。




「…あぁ…今日も良いのがいっぱいあるわぁ」




やっぱり通販番組はそそる…。



→でびルールスマン(2)へ



★→この怖い話を評価する



[怖い話]


[創作の怖い話5]