3分の1

創作の怖い話 File.23



投稿者 ストレンジカメレオン 様





これは私が塾の講師をしていた時に出会った恐ろしい事件の一つです。

私の働いていた塾は個別指導体制で先生と生徒の距離は近く、とても仲が良かったんですよ。

勉強以外のこともたくさん話す機会がありました。

部活のこと、恋愛のこと、家庭のこと、

今の子供たちは勉強以外にもたくさん熱心なものがあるのだと感心させられていました。

中にはやはり勉強熱心でひたすら勉強が好きな子もいました。

その中の一人に、数学の好きな生徒がいました。

この生徒は数字や式が好きで、一つの分野の解説が終わると、その分野の難しい問題を解きたがりました。

その問題を自分で解いたときは満面の笑顔で喜んでいました。

その笑顔を見ると、私も解説に熱が入り、どんどん先の範囲の授業を進めたものでした。

ある時、その生徒が

「不思議だ……

不思議だ………」

とぼやいていたので、少し気になって、彼のノートを覗いてみました。

すると3分の1と書かれているだけでした。

私は余計そのことが気になって、彼に何が不思議なのか聞いてみました。

すると…

「先生、3分の1って小数にすると0.333333…だろ。

でもって3分の2はそれの二倍だから、0.666666…になる。

だったら3分の3は0.999999…なんじゃないのか?

小数で考えると1には果てしなく近づくけど1にならないんだよ。」

「なるほど、そう考えると不思議だね!」

「だろ!ちょっとこのことを自分なりに完全に証明してみたいな!

先生!オレ必ずこの数字の不思議、自分で証明してみせるよ。」

その生徒はとても、意気込んでいました。

しかし、その日から全く塾に顔を出さなくなったのです。

家に連絡しても誰も電話に出る気配はありませんでした。

それから数日たったある日のこと、その生徒から一本の電話が私あてにかかってきました。

「先生!!3分の1の謎が解けたよ!!オレの家に来てくれよ!」

私はその生徒が心配だったので、電話がかかってきた時は嬉しく思いました。

私は喜んで返事をして、その生徒の家に向かいました。

「ピンポーン」

インターホンを鳴らすと、生徒がひょこっと顔を出しました。

「あっ、先生!! 入って!入って!きっと先生、驚くよ!」

「それは楽しみだ!」

嬉しそうに生徒は自分の部屋に案内してくれました。

「確かに1を3つに分けると3分の1、つまり0.333333…なんだ。

でも、0.333333…に3を掛けても1にはならないんだよ。

オレの部屋にそれを証明したものがあるんだ。」

そう言って、彼は部屋のドアを開けました。

「ほらね!!先生見て!もとの1には近づくけど、1にはならないんだよ。」

私は、背筋が凍り付きました。

彼の部屋には、三つに切断された母親の死体が、無理やり、パズルのように組み立てられ倒れてたんです…………

彼は母親の命を0に果てしなく近いものだと、捉えていたのでしょう……



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