CROSS(6)

創作の怖い話 File.223



投稿者 でび一星人 様





「鎌司・・・どういう事や?

ウチは、生きとんのんか?

死んだんとちゃうんか?」



「・・・死んでる・・・はずだけど・・・。


とりあえず・・・タケシ君からの結果を待とう・・・。


・・・あ、そうだ。


姉ちゃん、

せっかくだし、【研究所】に行こうよ・・・。」



「へ?何や、その研究所って。」


「・・・作ったんだ・・・。

モヤシ君に頼まれてね・・・。」


「モヤシ・・・?

モヤシがそこにおるんか?」


「・・・居るよ・・・。」


「そ・・・そうなんか・・・。

じゃ、じゃぁ辞めとくわ・・・。

ウチ、モヤシには会わせる顔が無いさかいにな・・・。」


「・・・なんで・・・?」


「え?いや、ほら・・・色々あったやんけ・・・。」


「・・・それって、姉ちゃんの【夢】の話じゃないの?

・・・モヤシ君は、姉ちゃんを助けられなかった事を・・・ずっと後悔しているんだよ・・・

あれから四年・・・ずっと・・・姉ちゃんを想って、今でも生きてるんだ・・・。

・・・だから・・・せっかく時間もあるんだし・・・

会ってあげてよ・・・。」



「え・・・そ、そうなんか?

まぁ・・・たしかに、【夢】の出来事やな・・・バツが悪いのは・・・。

手術でウチが助かって、その後、ウチとモヤシは付き合って・・・。

そしてウチはパチンコにハマって・・・。」

「・・・へぇ〜。

【夢】の中では、姉ちゃんとモヤシ君、付き合ってたんだね・・・。」


「ま、まぁな・・・。」


「・・・とりあえず行こっか・・・。」



そういうと、鎌司は家の外に出て、リモコンを取り出した。



ピッ




ウイイイイイィン・・・。



家の地面が真っ二つに割れ、下からベンツが登場した。


「うわっ!何やこのカラクリ!」


「・・・二年くらい前に、作ったんだ・・・。

もちろん僕が作ったんじゃぁ無いけど、業者に頼んでね・・・。」


「ほ・・・ほぉ・・・すごいな・・・。」


「とりあえず、乗って。」

鎌司に促され、ウチは左座席に座った。



「・・・姉ちゃん・・・運転するの・・・?」


「え?あ・・が、外車かコレ・・・ハハ・・・。」


ウチは右座席に座りなおした。




ブーン・・・。



ベンツは走る。





「・・・20分くらいで着くからね・・・。」


「お、おう・・・。


・・・


・・・



・・・それにしても、鎌司・・・。


お前、庭にあんなシステムとか、このベンツとか・・・


高かったやろうが・・・。

宝くじでも当たったんか?」

「・・・え・・・


ハハ・・・当たってないよ・・・。


給料で買ったんだ・・・。」



「給料!??


お前、プロ棋士になれずにクスブってたがな!」



「・・・あぁ・・・

25歳の頃だね・・・。

姉ちゃんが死ぬ少し前・・・。



・・・確かに・・・あの頃は姉ちゃんにも迷惑かけたね・・・。

・・・姉ちゃんが死んだ直後・・・。

勝たなければ、プロ棋士の夢が立たれる対局を・・・






・・・僕は落とした・・・。


九分九厘、勝ちの対局を・・・【二歩】という反則をしてしまってね・・・。」



「ええ!

・・・そっか・・・鎌司・・・結局プロ棋士にはなれんかってんな・・・。」



「・・・そうなんだ・・・。

僕は途方にくれたよ・・・。


プロ棋士にもなれず・・・姉ちゃんも失ってしまった・・・。


落ち込んでる僕を見て、

高校時代、野球部の後輩だった【優真(ゆうま)】君が声をかけてくれたんだ・・・。


『一緒に、プロテスト受けてみないッスか?』・・・ってね・・・。」



「それで・・受けたんか?」


「・・・うん・・・。

受けた。


・・・・でも・・・僕の肩は、高校時代で潰してしまっていて・・・

全力投球は、出来て10球程度・・・。

たしかに、良い球は放れてたんだけど・・・

10球しか投げれないピッチャーを、どこも獲ろうとはしなかったよ・・・。」



「そっか・・・

・・・で、なんでこんなに金あるねん!」

「・・・うん・・・。

ただ・・・ね・・・


僕の足に・・目を付けた監督さんが居たんだ・・・。」



「足か!そういえば、鎌司は恐ろしく足が速かったもんなぁ〜。

で、誰や?その監督って。」



「・・・うん・・・。

【苦天ヒヨコーズ】の、【野森監督】だよ・・・。


実は、野森監督は、僕が高校の時のドラフトでも、狙ってたそうなんだ・・・。

他がピッチャーで獲ろうとしていた時に・・・外野手としてね・・・。」



「ほう・・・。」



「・・・僕は見事テストに合格して、育成選手枠でヒヨコーズに入団したんだ・・・。

26歳で・・・。



・・・二軍戦で、僕はまず結果を出した・・・。

野森監督の指示で、左打ちを練習してね・・・。

打率.650 盗塁成功率9割5分・・・。


5月に入り、ぼくは1軍に上げてもらえた・・・。

・・・そこでも・・・僕は出塁して走りまくった・・・。」



「おぉ〜〜

‘93年に大ブレークした、【ヲレックス】のイジリーみたいやな!」


「・・・そうだね・・・。


僕はそのシーズン、


新人最高打率の.384を記録した・・・。

盗塁も、93個・・・。


球団は、それを評価してくれてね・・・。


次の年、いきなり年棒が跳ね上がったんだ・・・。


1億にね・・・。」

「ぶーーー!!

い・・いちおくっ!」



「・・・うん・・・。

宝くじよりも、確率高いよね・・・。

・・・で、翌年は打率.388、105盗塁を記録してね・・・。

【二年目のジンクス】なんて周りに言わせなかった・・・。


年棒は一揆に2億4000万。」



「ひゃ〜〜〜


におくぅ〜〜〜!」


「・・・27歳の時・・・つまり三年目・・・。

僕はタイトルを総なめにした・・・。


夢の四割も達成して・・・


ランニングホームランでホームラン王を獲って・・・。


スクイズで打点王も獲った・・・。」



「マンガやがな!」



「・・・たしかに・・・。

・・・で、ヒヨコーズは、僕の年棒を払えきれなくなった・・・。」


「ほほう・・・で?」


「・・・トレードさ・・・。

金銭トレード・・・。


動いた金額は、10億とも20億とも噂されたね・・・。

僕の年棒は、それで今年から10億になった・・・。」


「じゅ・・・十億・・・。


十円置くだけとちゃうんか?」


「・・・姉ちゃん・・・トミーズ雅かよ・・・。


金持ち球団の、【嫁入 スネオーズ】にトレードされたんだよ・・・。

あそこは金持ってるからね・・・。


その収入で・・・色々と買ったってワケだよ・・・。」



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