CROSS(5)

創作の怖い話 File.222



投稿者 でび一星人 様





「・・・そうだね・・・。

モヤシ君の手術は完璧だった・・・。

その後・・・看護師さんがあんなミスをしなれば・・・

姉ちゃんは助かっていたんだ・・・。」



「う・・・嘘や・・・。

ウ・・・ウチはモヤシに助けられて・・・。

その後・・・ずっと今まで生きてきて・・・。」



「・・・嘘じゃないよ・・・。

姉ちゃん、

疑うなら、今居る部屋を見てみなよ・・・。

姉ちゃんが生前使っていた、その部屋をさ・・・。」


「・・・え・・・。」


ウチは部屋を見渡した。


部屋は、今朝家を出た時とは違っていて、物置のようになっていた。

・・・ホコリっぽい・・・。


ウチの机も、いっぱいホコリが積もっていた。

そして机の上に・・・ウチの写真が飾られていた・・・。

黒い淵の写真たてに・・・。



「・・・姉ちゃん・・・どう・・・?

姉ちゃんが生きていたら・・・部屋はそんなふうになっていると思う・・・?」



そんな・・・。


マジか・・・。


ウチは・・・マジで・・・死んでしもうてるんか・・・?


「わ・・・ワケが解れへんねんけどな・・・。

ウチは・・・今朝まで・・・この部屋で普通に生活しとってんけどな・・・。」


「・・・姉ちゃん・・・。

死んでから、自分の死に気付かないケースって、あるらしいんだよ・・・。

その場合、【夢】のようなものを見る事があるんだって・・・。

・・・だから姉ちゃんは・・・きっとそんな感じだったんじゃないかな・・・。」

「そんな・・・。


そんなそんなそんな・・・。」




ガチャリ・・・。



ウチは部屋のドアを開けた。



ゆっくりと、鎌司が部屋に入ってきた。



「・・・姉ちゃん・・・。」


鎌司はウチの姿を眺めた。

ウチは鎌司の足を見た。


・・・ちゃんと付いていた。


「・・・姉ちゃん・・・。

ごめんね・・・遠まわしな言い方が出来なくて・・・

でも・・・こんな形でも・・・姉ちゃんと話す事ができて・・・僕はうれしいよ・・・。」



「鎌司・・・。」


ウチは鎌司に抱きついた。



「・・・痛いよ・・・姉ちゃん・・・グエ・・・。」


「ううう・・・鎌司ぃ・・・

ウチは・・・ホンマに死んでもうたんか・・・?

ホンマか?

ううう・・・。」



「グエ・・・

間違いないよ・・・グブ・・・。

姉ちゃんの仏壇が・・・リビングに・・・

リビングエッ・・・。



・・・とりあえず、フンギリをつける意味でも・・・グハァ・・・見に行く・・・?」


ウチはコクリと頷いた。



二人で階段を下り、リビングへと歩く。

「・・・。」


「・・・。」


無言・・・。



リビングには、確かに鎌司の言う通り、ウチの顔写真が飾られた仏壇が置いてあった。


「ホンマに・・・ウチ死んでるんやな・・・。」


ウチはとりあえず自分の仏壇に手を合わせた。


「・・・いや・・・自分の仏壇にそれはやらなくてもいいだろ姉ちゃん・・・。」


こんな鎌司のツッコミも久しぶりだ。



「・・・で・・・ウチはこれからどこに行ったら良いんや・・・。」


死んだのなら・・・天国に旅立とう。


ウチはそう思い、鎌司に聞いた。


「・・・え・・・。

どこに行くって言われても・・・

天に昇っていったりとかって・・・できないの?」


「飛んでみたら・・・飛べるんかな?」


「・・・さぁ・・・多分・・・。」







ウチは、鎌司と一緒に二階のベランダに立った。



「・・・じゃぁ・・・姉ちゃん、お別れだね・・・。」


「あぁ・・・。

鎌司・・色々とありがとうな。」


「・・・こちらこそ・・・。」


ウチは鎌司を背に、思い切って二階のベランダから飛んだ。

・・・ヒュ〜〜〜〜〜・・・。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・






ドスン!!





・・・思いっきり地面に落っこちた・・・。











「イデ・・イデデデデデ・・・


もっと優しくしろやぁ!」



「・・・ごめんよ・・・。」



―リビング―



鎌司は、二階から落ちたウチの手当てをしてくれていた。


「天に飛んでいけるんちゃうんか!?鎌司!」


「・・・いや・・・僕も死んだ後の事なんてわからないから・・・


・・・それにしても・・・姉ちゃん、死んでるんだよね・・・?


あきらかに普通の生身の体っぽいけど・・・。」



「ウチが聞きたいわ!

死んだんちゃうんかウチは!」



「う・・・うん・・・。

死んだのは間違いないよ・・・。

仏壇もあるでしょ・・・?

・・・でも・・・何だろう・・・。

僕は小さいころ、霊をよく見ていたんだけど・・・。

こんなハッキリと実体があるのは初めてだな・・・。」


鎌司はそう行うと尻のスリ傷を消毒した。


「イダダダダダダ! 鎌司ぃ! 痛いがな!」


「・・あ、ゴメン・・・。

これ、水虫の薬だ・・・。」



「アホォ〜〜〜!!!」

鎌司は、悩んだ挙句、【雪村 タケシ】に電話をかけた。


【雪村タケシ】は、中学時代の同級生だ。

ウチとはよく遊んでいた。


タケシは、夏の甲子園大会の準決勝で、鎌司のチームと対戦した事もある。

その後、タケシは坊さんになった。


なので鎌司は霊的な事で何か困った事があったら、

まずはタケシに電話するらしい。




電話をかけ終わると、鎌司はウチの隣に座った。


「・・・丁度、近くの家でさっきまでお経読んでたみたいだから、

家に寄ってくれるって・・・。」









5分後、家のチャイムが鳴り、タケシが入ってきた。



「よお!タケシ!」


ウチはタケシに向かって手を振ったた。


「お・・・おおおおおおぉぉぉおお!鍋衣やんけ!!」


タケシは嬉しそうにウチに近寄ってきた。



「鍋衣・・・お前・・・確かにあの日、成仏したはずやのに・・・

なんでここにおるんや・・・?」


タケシは不思議そうな顔をしてウチに言った。



「え・・・いや・・・ウチにもようわからん・・・。」


「そうかそうか・・・。


まあええ。

今日、ちゃんと成仏させたるからな・・・ん?」


タケシはそこまで話しかけると、ウチの体をジロリと見つめた。


「・・鍋衣・・・。

お前・・・確かに鍋衣やけど・・・。

何や、生きてるみたいやな・・・。

ちょいと失礼。」


タケシはウチの乳を揉んだ。

「な、何すんねん!

このエロ坊主が!」


ドガッ



  バキッ



 グラップラッ








ボコボコに腫れ上がった顔のタケシは、鎌司とウチに言った。


「イデ・・・鎌司よ・・・。

この鍋衣・・・死んでへんで・・・。

生きてるわ・・・。」



鎌司は驚いた顔をした。


「・・・生きてる・・・?」


「あぁ・・・死んでたら、これだけオレをボコれるワケないやろうが・・・。」


「・・・でも・・・姉ちゃんはあの日確かに死んで・・・タケシ君がお経も唱えてくれたじゃない・・・。」


「あぁ。 100パーセント、鍋衣はあの日死んだ。

鍋衣が天に戻っていったのも、オレは見届けたしな。

・・・でも、この鍋衣は生きとる。

・・・なんでかは解らん。」



「・・・解らんって・・・そんな・・・。」


「とりあえず、色々と調べとくわ・・・。

また何かわかったら連絡する・・・。

今日はこれからまだ用事もあるしな。」



「・・・そっか・・・。

ありがとう・・タケシ君・・・。」



「いや・・・


に、しても鍋衣・・・


相変わらずお前のパンチは重いな・・・イデデデデ・・・。」



タケシはそう言うと、袈裟をひるがえし、原付にまたがって30キロ道路を時速50キロで駆け抜けて行った。



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