ハッピーブレイン |
創作の怖い話 File.22 |
投稿者 ストレンジカメレオン 様 |
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脳は人間の体にあるゆる情報を送る。 喜び、驚き、快楽、悲しみなど… 良い情報から悪い情報まであらゆる情報を送る… 出来るだけ悪い情報は送りたくないものですよね。良い情報だけならば人は幸せでしょう。 そこで開発されたのが『ハッピーブレイン』 この機械、頭にとりつけて、ボタンを押すだけ、 実際の喜びや快楽を脳に伝え、全身でそれを実感出来るのです。 さらにすごいのはあらゆる状況をインプットすることで、 何通りものプラスの刺激を味わうことが出来るのです。 例えば…… とてもお腹がすいてる状況で自分の大好きなお寿司を食べたときの喜び。 こういった状況をインプットすれば、その時に得る情報と全く同じ情報を脳が感知します。 それにより、全身でその状況と同じ喜びを味わうことが出来るのです。 どうです!? この『ハッピーブレイン』 一家に一台あると最高ですよ!! 「ハッピーブレインかぁ〜、ちょっと値段は高いが、こんな極秘商品、手に入れられるのは今だけだしな…… 買ってみるか!」 オレは多額を支払い、この『ハッピーブレイン』を購入した。 この商品、実は裏でしかやり取りされていないのだ… いくつか理由があるのらしいだが詳しいことはよくは分からない。 ただ偶然、昔の友人がこの機械の企画にたずさわっていたことから、オレはこの機械の存在を知った。 (ハッピーブレインねぇ〜、この機械、どれくらい効果があるんだろ…ちょっと使ってみるか!) オレは早速、この『ハッピーブレイン』を頭に装着し、もともとインプットされている状況を選んだ。 状況:野球の試合で九回裏ツーアウト満塁で三点差この時に逆転ホームランを打ち放った時の喜び。 そしてオレはスイッチを押した。 「おぉ〜〜!!!!」 全身に鳥肌がたつほどの快感だった。 「す、すごい…… これさえあれば、どんな状況もリアルに味わうことが出来るぞ!!」 オレはその日から『ハッピーブレイン』の虜になった。 毎日毎日、あらゆる状況から得られる喜びや快感をこの機械を通じて、味わっていた。 しかし……… この『ハッピーブレイン』を使い始めて、大体、三年が経つ頃、オレの体に異変は起こっていたのだ…… どんな喜びを感じる状況を味わっても、何にも感じなくなってしまったのだ。 脳が快感に慣れすぎてしまったのだろうか。 日頃にある、ささいな喜びなど全く分からなくなってしまった。 何が喜びで何が悲しみなのかが分からないのだ。 なぜあの人は笑うのか、なぜあの人は泣くのか…… 人間って何のために生きているのかさえ分からなくなってしまった… (こんなにも感じない感覚になってしまったら、オレは生きてても、しょうがないんじゃないかな…) 「あっ!」 オレはひとつあることを思い付いた。 〈生きる価値を自分で見いだした時の快感〉 これを『ハッピーブレイン』にインプットすれば、もう少し楽しめるんじゃないかな。 オレは機械にこのことをインプットして、スイッチを入れた…… すると… 生きたい……生きていたい、 そんな強い感情がオレの中に生まれた。 しかし生きたいという感情が生まれただけで、 何故生きていたいかは全く分からなかった。 何故なら無理やり、感情を機械によって生じさせただけで、 実際に自分が生きる価値を見いだしたわけではなかったからだ…… ただ生きたい。 死にたくないという感情が強くなっただけに過ぎなかった… 本当の幸せってなんだろう…… 本当の悲しみってなんだろう…… きっと幸せも悲しみも実際に自分が行動して手に入るから重みがあるんだろう…… オレの脳は、そんなことを理解出来ない脳になってしまった。 ただ死にたくないだけ。 〈死にたくなった時の快感〉 気付けば『ハッピーブレイン』にこんなことをインプットしている自分がいた… ★→この怖い話を評価する |
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