自動車教習所(1) |
創作の怖い話 File.215 |
投稿者 でび一星人 様 |
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知り合いの女性から聞いた話です。 本人から、誰にも話さないように言われていますので、 わかりにくいようにその子の名前はイニシャルで記載させていただきます。 その子の名前は【N衣】ちゃんと言います。 今年で28歳になるとても綺麗な子です。 N衣ちゃんは少し前までOLをしていましたが、上司をぶん殴って退職しました。 今はパチンコと両親の年金で生計を立てています。 まあ、パチンコと言っても、フリーターでパチンコの店員をやっているとかでは無く、 いわゆるパチプロです。 そんなN衣ちゃんが、2ヶ月ほど前、何を思ったか「ウチ、車の免許取りたい!」って言い出して、 その日のうちに合宿の申し込みを済ませました。 僕はN衣ちゃんの性格を良く知っていたので、必死に止めました。 止めましたが、僕はレバーにきついのを1発くらって「うぐ・・・。」ってなって止められませんでした。 1週間後、N衣ちゃんはバスに乗ってT島県に行ってしまいました。 順当に行けば、合宿の場合、二週間と少しあれば終了します。 ですが、N衣ちゃんが大阪に帰ってきたのはそれから1ヵ月半も後の事でした。 N衣ちゃんが大阪に帰ってきたその日の夕方、 僕は免許GET祝い?をしようと、N衣ちゃんと一緒にファミレスに来ていました。 N衣ちゃんは心なしか、痩せたように感じました。 「N衣ちゃん、免許、無事とれたん?」 と聞くとN衣ちゃんは、 「・・・まあな・・・。まだ門真(かどま)行かなアカンけどな。」 と言ってオレンジジュースをすすりました。 N衣ちゃんは元々明るく元気なタイプなのですが、 なんだかとてもテンションが↓になっていました。 「N衣ちゃん、合宿で何かあったん?」 気になったので僕は聞いてみました。 すると鍋衣ちゃんはコトリとコップを置いて、 「まあな・・・。今から話す事、誰にも言うなや?」 と言って、僕に合宿で起こった出来事を話してくれたのです・・・。 N衣ちゃんがその教習所を選んだのは、女子の合宿寮が改装され、豪華になったからという理由からでした。 そして学生でごった返す夏休みを外し、 安くて人の少ない時期に、ゴージャスな教習所ライフを送ろうという目論みがあったそうです。 ですが、N衣ちゃんは合宿所に着いてあぜんとしたそうです。 宿舎は今にもぶっつぶれそうなボロボロ。 N衣ちゃんはとりあえず近くに居た教官の胸倉を掴んでヤカったそうです。 「どないなっとるねん!」って。 教官はビビリながら教えてくれたそうです。 「女子寮の改装は来年じゃよ・・・。」 ・・・って。 N衣ちゃんは慌ててカバンからパンフレットを取り出して確認しました。 ・・・そしたらやっぱり来年からって書いてあったそうです・・・。 そうなると、シーズンを外して人の少ない時期を選んだ事がアダとなります。 ボロッボロの宿舎に、 N衣ちゃんは一人。 夜なんかはとても怖かったそうです。 トイレの近くの部屋だったそうですが、 ポタン・・・ ポタン・・・ と、 水のしたたる音が一晩中聞えてきて初日は寝不足。 翌日、「トイレの水道のパッキン緩んでるがな!」って教官にまたヤカったそうです。 教官は「そんな事ないと思うけど・・・。」と言って調べたら、パッキンは緩んでなかったそうです。 その教官は優しい人だったみたいで、その日のうちにN衣ちゃんの部屋をトイレから遠くの部屋に代えてくれました。 ですが、水のしたたる音は毎晩聞えていたそうです。 N衣ちゃんはこの寮には何かあるのかなと思い、やさしい教官にヤカり、耳栓を買ってこさせたそうです。 耳栓をしだしてからは、夜もしっかり眠れるようになり、 N衣ちゃんは順調にステップアップして行ったそうです。 第一段階も終了したある日、 N衣ちゃんはある事に気づきます。 N衣ちゃんが代えてもらった部屋は、入り口から見て1番奥の部屋。 入り口を入ってすぐのところにトイレがあります。 そこから廊下伝いに、部屋は全部で5つあるのですが、 一番奥であるはずのN衣ちゃんの部屋の横の壁は、 あきらかに部屋がもう一つあるくらいのスペースが存在していました。 翌日、「喉渇いた。」という理由で、 路上教習中無理やりコンビニに寄ったN衣ちゃんは教官にその壁の事を聞いたそうです。 教官は、最初は「知らないな〜。」とトボけていたそうなのですが、 明らかに何か隠してる感じがしたのでN衣ちゃんは「教習中に女の子とコンビニでサボってる事、上司にバラすで。」 って強引な脅しを交えて問い詰めたそうです。 すると、教官はシブシブ、「・・・昔はあそこ、もういっこ部屋があったんじゃ・・・。」と吐いたそうです。 「なんでその部屋が壁になってんねん?」と聞いたところ教官は、 「・・・おれが話したって、誰にも言わないでね・・・?」 と前置きして、 「実はそこの部屋ね・・・元は物置だったんじゃけど、 シーズン中は寮生の部屋としても使っとったんじゃわ。」 と、遠まわしに語り始めました。 そんな遠まわしさにN衣ちゃんはカチンと来て、 胸倉をつかんで「早く結末を喋れ!」 と脅しました。 「わ・・・わかったけん、服掴むのやめて! 服のびてまう!」 教官はN衣ちゃんを必死に宥めたそうです。 そして、 「・・・じつはあの部屋な・・・ アス〇スト問題で引っかかった部屋なんやわ・・。」 と、小さな声で言いました。 N衣ちゃんはまた教官の胸倉を掴み、 「ウチをそんな怖いところの隣の部屋にしたんかいな!」 と怒鳴ったそうです。 教官は「隣でも大丈夫やけん気にせんとき!」 と泣きながら訴えたそうですが、 【こういうのは気持ちの問題】 という事で、N衣ちゃんは【真ん中の部屋】に移動させてもらう事になりました。 真ん中の部屋でも、相変わらず【水のしたたる音】は聞えていたそうです。 その真ん中の部屋に変わった頃から、 N衣ちゃんは体調がすぐれなくなったそうです。 原因不明の頭痛、 喉の痛み、 耳鳴り。 過去に1度、心臓の手術をした事はあったものの、 他は至って健康で、ケガ一つした事のなかったN衣ちゃんはおかしいなと思ったそうです。 その日から、教習の方もなぜかミスが多くなったり、トラブルが続出して、 それまでスムーズに合格のハンコを積み重ねていたのに、【やり直し】を頻繁に喰らうようになってしまいました。 そんなN衣ちゃんの姿を見て、「クスッ」と笑う地元高校生を、 N衣ちゃんは数人シバいたそうです。 合宿に入り、1ヶ月が経った頃、 さすがにこの体調不良はおかしいと思い、 教官に近くの病院を聞いて、N衣ちゃんは診察してもらったそうです。 ・・・しかし、どこにも異状は無いという事でした。 診察に行った晩、 N衣ちゃんは夢を見ました。 夢の中には、真っ白なパジャマのようなツナギのスカートを着た女の子が出てきました。 女の子は人形を片手にかかえた状態で、N衣ちゃんに近付いてきます。 顔は影のように暗くて、よく見えませんでした。 ただ、抱えている人形の片腕がちぎれ、喉の辺りがエグれているのがとても印象的だったそうです。 それからも体調は優れず、教習中のミスやトラブルもだんだんと酷くなって行きました。 最初は方向指示器の光り方が鈍くなるといった軽いトラブルでしたが、 最近は踏み切り上でエンストしたり、教官の席に付いているブレーキが作動しなくなったりと、 ドラブル内容も命に関わる内容になって行ったそうです。 N衣ちゃんの夢に出てくる女の子は、毎晩夢に出てくるようになりました。 毎回同じように、不気味な人形を抱え、顔は影のように暗くてよくわからないといった姿でした。 女の子が夢に出てきて1週間が経った頃でしょうか。 N衣ちゃんはある事に気づきます。 夢に出てくる女の子の姿が、だんだんと大きくなっているのです。 ・・・いや、大きくなってるように見えるだけで、 自分に近付いてきているようなのです。 (コイツ、何かウチにメッセージか?) N衣ちゃんはなんだかそんな気がしたそうです。 →自動車教習所(2) ★→この怖い話を評価する |
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