疫病神様(1)

創作の怖い話 File.205



投稿者 でび一星人 様





身長176


 体重123





 僕の名は【八木 鎌司】。

24歳A型。


彼女居ない暦24年。


メガネで引きこもり。


プロの将棋指しを目指しているのだが、

世間的な評価は【ニート】だろう。


 僕の人生、

こんなはずじゃ無かった。


今頃本当は、バンバンタイトル戦で賞金を稼ぎ、

僕を支えてくれた父さんや姉ちゃんに楽をさせてるはずだった。


いや、それだけじゃない。

別の明るい未来もあった。


僕はプロ野球選手になっていたかも知れないのだ。

当時、

僕は肩を壊していたので、誰にも何も言わずに、プロからの誘いを断ったのだ。


 僕は高校時代、野球をやっていた。

今、プロで大活躍する、【嫁入 スネオーズ】の桑太投手と、

【頭部 オーライズ】の清腹選手が揃っていた、あのOL学園にも勝っている。



もしかしたら・・・あのまま肩の事を黙ってプロ入りしていれば・・・。

契約金1億の評価をしてくれた球団もあった。


24歳、ニート、 メガネ、 太っちょ・・・。


 こんな未来なら・・あの時・・・。

ガチャッ


「・・・入るで〜鎌司〜。」



姉ちゃんが、僕の部屋に入ってきた。



「・・・な、何だよ・・・。入ってくるなよ・・・今将棋の研究中なんだよ・・・。」



「はんっ!何辛気臭い事言うとんねん! 一人でずっと部屋篭ってたら、頭オカシなるで!たまには人間と喋らんと!」


姉ちゃんはそう言って、僕の部屋のカーテンを開けた。


「・・・う・・・。」


太陽の日がまぶしい・・・。


やめてくれ・・・。


なるべく、世間に触れたくないんだ・・・。



「鎌司・・・。 ほんまに、元気だせやぁ・・。 昔は姉ちゃんを助けてくれたりして頼もしかったやんけ・・・。」


・・・昔・・・。


今の僕・・・。



あぁ・・・

ぁぁああああぁsdsどぇれd
・・。



「・・・で、出ていけよ!姉ちゃん・・・。」



ピシャッ!


僕はカーテンを閉めて、姉ちゃんを睨んだ。


「・・・う・・・な、何やねん・・・そないに怒るなや・・・姉ちゃんは鎌司を心配して・・・。」


「・・・う・・・うるさい!出てけ! 僕は一人で集中するんだよ!」


「ん・・・そうか・・・悪かったな・・・。」


バタン。


姉ちゃんはドアを閉めて、部屋の外へと出て行った。

・・・わかってるんだ・・・。


姉ちゃんが、僕を気遣っている事は・・・。


でも、僕は恥ずかしさや情けなさや、


そういう色んな感情があって・・・。


自分に自信ももてないし・・・。



結果、素直になれていない・・・。


「うううう・・・。」


僕は机に顔を埋めた。




ゴメン・・・姉ちゃん・・・。


心の中で姉ちゃんに謝った。



姉ちゃんの名前は【八木 鍋衣】。


24歳、OL


双子なので僕と同い年だ。


姉ちゃんは去年までコンビニでバイトをしていたが、


今年の春から、コネクションを利用してOLになった。


元々母に似て、綺麗な顔立ちの姉は、OLになって服や化粧でさらにキレイになった。


・・・僕みたいな、どうしょうもない弟が居たら、きっと迷惑だろうな・・・。


本当に情けない・・・。

ピンポーン。





家のチャイムが鳴っている。



僕はカーテンの隙間からそっと玄関を見てみた。




『はぁーい。』



姉ちゃんがお客さんを出迎える声が聞えてくる。






 来客は・・・帽子をかぶっている男のようだ・・・。



それもかなり深く・・・。






ガチャッ。



姉ちゃんがドアを開けた音が聞えてきた。





帽子を深くかぶった男は、ポケットに手を入れた。



・・・何かを取り出すのか?




 姉ちゃんがドアを開けて、その男を見た時だった。





















「あぁーーっ!」








姉ちゃんの叫び声が聞えてきた。








ガタッ!




僕は慌てて部屋を飛び出した。



姉ちゃんに・・・。




何かあったのか!?

玄関に向かって走る。


ドタドタと。







そして玄関に着くと、












「・・・あっはっは。ホンマ、久々やなぁ。元気しとったかぁ?」



・・・姉ちゃんは楽しそうにその来客と話をしていた。





・・・何だ・・・取り越し苦労か・・・。



僕は部屋に戻ろうとした。



「あ、鎌司!」


姉ちゃんが僕を呼び止めた。



僕は反射的に足を止める。



「ちわっス!八木さん!」




・・・聞き覚えのある声・・・。



僕は姉ちゃんとお客さんが居る玄関の方を向いた。



「・・・あ。」



姉ちゃんの横には、帽子をクイっと上にあげる【美角 優真】君の姿があった。




 美角 優真君は中高校時代、同じ野球部だったチームメイトだ。

・・・同じ野球部と言っても、学年は僕より二つ下になるので、共に野球をやった期間は短いのだが・・・。


そんな優真君が家を訪ねて来るなんて、何年ぶりだろうか・・・。

僕が高校を卒業した直後に、1度遊びに来た事があったのだが・・・。



「八木さん!エラい肥えましたねぇ!アハハ。」

「・・・ほ、ほっといてよ・・・。」

「あ、すいませんすいません。」


軽く笑いながらあやまる優真君だが、

僕の心は少し傷ついた。


「あ、それより鎌司さん!今日は少し相談というか、聞いてもらいたい事がありましてね。

時間少しあるっスか?」


・・相変わらず、優真君は明るいな・・・。

さすが、勘で生きてる人間だ・・・。



→疫病神(2)へ



★→この怖い話を評価する



[怖い話]


[創作の怖い話5]