仲間殺し

創作の怖い話 File.20



投稿者 ストレンジカメレオン 様





オレは仲間を殺してしまった……

あいつがあんなこと言うから…

「なあ、噂なんだけどめっちゃ当たる占い師が、いるらしいんだ!面白そうだから行ってみないか!」

「まじか!オレあんまりそういうの信じないほうだけどちょっと面白そうだな!」

「じゃちょっと行ってみようぜ!」

オレは友達を連れて、その占い師がいるという場所へと向かった…

「ここらへんで占い、やってるって聞いたんだけどなぁ……

あっ 多分あれだ!」

そこにはいかにも、という格好をした占い師が道路脇に水晶玉を置き、その目の前に座っていた…

「やっぱ、なんか本格的だな…行ってみようぜ!」

オレたちは早速、胸を躍らせ占い師の所へ行った。

「なあ、占ってくれよ!一回いくらするんだ!?」

「一回、一万…」

占い師はボソッと返事をした。

「高っ…ぼったくりじゃねえの!」

「まあ待て、たしかに一万は高いな…なあ占い師さん、あんたの実力が本物かど うか知りたい!

ちょっとオレのことについて当てることが出来たら一万払って占いしてもらうよ!それでも良いかい!?」

「そこに座りなさい…」占い師はまたもボソッと返事をした…

オレは言われるままに用意してあった椅子に腰をかけた。

「じゃオレのことについて当ててみてくれ!」

占い師は水晶玉に手をかざし、ボソボソと呪文を唱え始めた…

そして…

「あなたは斎藤 明… 20歳… O型… 昨日は新宿にカラオケへ行ってましたね…

まあこんな感じでどうでしょう…」

「あ、当たってる…す、すげえよ!!オレ一万払うから占ってくれよ!

聡も占ってもらえよ!これなら一万なんて安いもんだ!」

「お、おう」

そしてオレたち二人は一万を払い、占いをしてもらった。

「聡!来て良かったな!あいつが言ってたこと、本当に当たるかな」

「当たるんじゃないか、明、本物っているんだな!びっくりしたよ!」

「占ってもらって良かったな!あれっ、もうこんな時間だ…今日はもう遅いしそろそろ帰るか」

そうしてオレたちは解散した。

家に着いたオレは一人の友達に電話をかけた。

「もしもし、オレオレ、今日は完璧な演技だったよ!オレの友達、完全に騙されてたぜ、さすがだな、和也は」

「ははっ、オレの占い師っぷりも本格的になってきたのかな!」

そうオレたちは知り合いをこういった手法で騙し、金を儲けていた。

もう一人仲間がいて、そいつもオレと一緒に多くの知り合いを騙している。

言ってみれば最悪の三人組だ。


こんな感じにバイトもせず、オレたちはふざけた生活を送っていた。

そんなある日のこと、そのもう一人の仲間の健から電話がかかってきた。

「もしもし、どうした?健、」

「和也のやつ、もうオレたちとは縁を切るって言い出したんだよ!

しかも今まで儲けた金の半分持っていくとか言い出しやがった!

ちょっとオレ今から和也の所、行ってくる!」

「まじか、和也のやつ、オレたちを裏切る気か!健、ガツンと言ってきてやれ!

オレたちのおかげで儲けたようなもんなんだしな!」

「おう!任しとけ!」

そして次の日、

健から電話がかかってきた。

「もしもし、健、どうだった?和也のやつにガツンと言ってやったか?」

「明、…………和也のやつ、本当に見えるようになったらしい……相手の未来と過去が……」

「なに馬鹿げたこと言ってんだよ!んなことあるわけねえだろ!」

「でもよ、オレの過去、本当に当てられたんだ…それですげえと思ってオレの未来も見てもらったんだ…

そしたら…………」

「そしたら…!?」

「オレは首を切られて殺されるらしい…しかも和也がオレを殺すらしいんだ…何故だか分からないけど……

だから和也のやつ、殺されたくなかったら、オレにはもう近付くなって言ってた…」

オレはその占いの内容にぞっとした…

しかし次の瞬間、別の思考が働いた。

(和也はわざと、そういう風に言ってオレたちを遠ざけ、儲けた金を独り占めしようとしてるんじゃないか…

健の過去を言い当てたのは、友達からの情報があれば、いくらでもごまかせる…)

「オレもちょっと和也に会ってくる!あの野郎、なに考えてんだか!」

そしてオレは電話で和也と会う約束をした。

約束の日…

オレは待ち合わせの駅へと向かった。駅に着くと、和也はもう来ていた…

「和也、久しぶり!健から聞いたぞ!ここじゃなんだから、あそこの店に入ろう!」

近くの喫茶店に入ったオレは早速、本題を持ち出した。

「何で、縁切るなんて言い出したんだ!?

しかも本当に相手の過去や未来が占えるようになったって嘘までついて…」

「明、嘘じゃないよ…信じさせてあげるよ…」

そう言って和也はバッグからおもむろに水晶玉を取り出した…

そしてそれを、テーブルの上に乗せると、なにやら呪文をつぶやき始めた…

「じゃ今から明の昨日の出来事を言うよ……」

驚くことに本当に和也はオレが昨日、行った場所や食べた物まで正確に当てたのだ…

「な、なんで……」

オレは言葉を失った…

「ついでに明の未来も見てあげるよ…未来は過去よりもはっきりは見えないけどね…」

そしてまた和也は呪文を唱え始めた…

「明………やっぱりオレにはもう近付かないほうが良い…

何故だか分からないがオレがお前の首を切って殺す映像が見えた…

健の時もそうだったんだ…

でもオレはお前たちを殺したいとは思っていない…

だからオレには近付くな!

今まで儲けた金はやるから!」

オレは後味の悪い和也の言葉に悪寒を覚えながら家に帰った…

家に着いたオレは健に電話をかけた…

「あっ、もしもし、健…やっぱりマジかもな…オレも和也に首切って殺されるらしい…も

うあいつに関わるのはやめよう…金だってオレたちに譲るって言ってるし!」

「明………和也を殺しちまおう………」

「なっ!健、何言ってんだよ」

「あいつの占いは当たるんだよ…実際すでにかなりの評判を上げてるらしい…

このままだとオレたち、和也に殺されちまうぞ…

だけどオレたちが和也を殺せばいくら和也の占いが正確だろうとあいつはオレたちを殺すことは出来ない…

だから和也を殺しちまおう!オレが電話でうまいこと言って和也呼び出すから明も来いよ…

じゃあな…また連絡するから…」

ツーツーツーツー

健は一方的に電話を切った…

本当に和也を殺すのか…

オレは、自分がどうすべきなのかが分からなくなってきた…

答えが出ないまま、日が経っていった……

そして答えの出ないまま、ついに健からの電話がかかってきてしまった…

「明、今日の深夜一時、和也を家の近くの公園に呼び出しといたから……

和也に首を切られて殺される前にあいつの首を切ってやる!」

そして深夜の一時まであと十五分くらいになった…

オレと健は物陰に息をひそませ、和也が来るのを待った…

ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

一つの足音が近付いてきた…

和也だ………!

ザッ ザッ ザッ ザッ

健がオレに合図を出した。

オレはその瞬間、物陰から飛び出し和也を取り押さえた!

「な!明、なにすんだよ!離せ!何でお前がここにいるんだ!」

和也は必死に抵抗を見せた…

その次の瞬間、健も物陰から飛び出し用意していた刃物で思いきり和也目掛けて切りつけた。

そして健は徐々に弱っていく和也の首を切断した…

「ふぅ…ふぅ…明、やったな、これでオレたちは安心だ!」

(おえっ………)

あまりにも無惨な和也の死体を見てオレは吐き出しそうになった…

「この首は気持ち悪いな……」

健はそう言うと用意していた黒いビニール袋を取り出し和也の切断した首をそれに入れて縛った…

「明、これ気持ち悪いから適当な場所に捨ててきて!残った胴体は公園の湖に沈めちまおう!」

オレはビニール袋を近くにあった公園のトイレに放り投げてきた…

そして胴体は健の言うように湖の底へと沈めた…

計画通り和也を殺したオレたちは自分たちの家へと帰った…

家に着いたオレは後悔の念に襲われた…

オレは仲間を殺してしまった……

健が和也を殺しちまおうなんて言うから………

オレはそれから精神的に病み、ひきこもりになった…

それから数週間後、あの時以来全く音信不通になった健に、オレは久しぶりに電話をかけた……

すると…

「この電話番号は現在使われておりません…」

と機械音が流れた…

オレは妙な嫌な予感を感じた…

それは和也が占った内容だ…

〈何故だか知らないが首を切ってオレはお前を殺す…〉

気がつくと、オレはあの公園へ来ていた…

そして首を入れたビニール袋を放り投げたトイレのドアを開けた………

そこには二つの黒いビニール袋が転がっていた………



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