Bad day(10) 進まない捜査

創作の怖い話 File.17



投稿者 ストレンジカメレオン 様





恵理が宮本さんに月光会の内部の情報資料を渡してから数日が経っていた。

オレと恵理は宮本さんの貸してくれたアパートにひっそりと隠れるようにして、警察の動きを待っていた。

宮本さんの話によると、警察内部では恵理の情報は、衝撃的なもので、どのようにして証拠を明確にして、

月光会と〔太陽の光〕に捜査を入れるか慎重に検討中らしい。

宮本さんを中心に捜査チームが編成され、

着々と準備は整っているのらしいのだが、時間はただただ過ぎていった…

オレと恵理は過ぎていく時間に我慢出来なかった。

特に情報提供者である恵理のほうは…

「私、警察に出向いて様子を見てくるわ」

「恵理、やめといたほうが良いって!!恵理はもと月光会のメンバーなんだ…

すぐ見つかってしまう…今は宮本さんを信じて待つのが得策だよ。」

「でも…あの資料は私が何年もかけて…」

「それならオレが様子を見に行ってくるよ。オレのほうがあいつらには顔は知られていないはず!」

オレは恵理をアパートに残して、ニット帽をふかく被りサングラスをかけ、アパートの外へと出ていった。

警察に出向くにはいかにも怪しい格好ではあるが自分自身の保身のため、

このような格好するしかなかった…

宮本さんが担当している警察署にたどり着くと、オレは背筋が凍るポスターを見つけてしまった…

オレと恵理が連続殺人事件の犯人として指名手配されているのだ…

はっきりとした写真が載せられていた。

(こ、これは……

なんで…オレと恵理が…?宮本さんは何をやっているんだ…?)

オレはこの場にこれ以上、自分がいてはいけないことを悟り、すぐにアパートへと戻ることにした。

アパートに戻ったオレは一刻も早く、このことを恵理に伝えようとした。

「恵理!!オレたち、大変なことになってる!!」

「……………」

恵理からの返事はなかった。

「恵理……?」

部屋にもどると、そこには恵理の姿は無かった。

部屋に着くと、机には置き手紙が置いてあった。

〈浩一君へ〉

宮本さんからであった。

〈急に恵理君を連れて行くことになって申し訳ない。

阿久津もこちらの動きに気づいたようで警察内で月光会の息のかかった奴らが動いている状況である。

それにより浩一君と恵理君は一連の事件の指名手配犯とされることになってしまった。

このまま私の勢力下の警察だけで動くのは、リスクがありすぎる。

そこで指名手配犯となっている恵理君だが、重要な情報提供者として警察に連れて行くことにした。

もちろん私達の保護のもとである。

そのほうが阿久津を追い詰めるにはより的確な手段になると思う。

恵理君自身も望んだ手段でもある。

ただ私達の身が必ずしも安心であるとは言い切れないのも事実である。

そこで、私が時間をかけて編成した捜査チームがある。

この捜査チームは皆、信頼出来るメンバーだ。

この捜査チームのリーダー役として動いてもらっている赤松という男の連絡先を

ここに記しておく。

なにかあったらこいつに連絡をとってくれ。

赤松は本当に信頼出来る男だ。

それではもう少しの我慢だ。

この任務を務め上げることが今の私に出来る、君達への償いだと思っている。〉

「そんな………急に……」

オレにはどうすることも出来なかった。

ただ宮本さんの策がうまくいくことだけを祈るしかなかった。

オレはそれから寂しいアパートで一人ただただ時間を過ごしていた。

恵理が宮本さんと一緒にアパートを出て、一日が経ち…二日が経ち……三日が経とうとしていた。

だがその間に一度も恵理はアパートに戻ることは無かった。

また恵理の携帯には連絡はつながらなくなっていた。

刻々と過ぎていく時間と比例しながるつのる不安…

このままずっと何の連絡も来ないまま、時が過ぎていくのかもしれない…

何でも良い…連絡が欲しかった。

ただ恵理が生きていることを確認出来る連絡が欲しかった…

オレは祈るように唯一の連絡手段である自分の携帯を見つめていた。

「ヴーヴーヴーヴー…」

自分の携帯が鳴った…非通知電話だ…

鳥肌が立つほどの瞬間だった。

オレはとっさに電話を取った。

「もしもし……」

「…………………浩一?」

やはり電話の相手は恵理であった。

オレは恵理の無事を確認することが出来た安堵から体の力が一瞬にして抜けていった。

「恵理!!どうしてもっと早く連絡よこさないんだよ!

オレがどれだけ心配したことか!!

ところで捜査は順調に進んでるのか!?

宮本さんは!?」

「浩一…ごめんね…

宮本さんは……

殺されたわ………」



  → Bad day(11)  最終話



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