Bad day(7)
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創作の怖い話 File.14 |
投稿者 ストレンジカメレオン 様 |
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イベントの時間…… その響きは、オレにあの悪魔の時間を思い出させた。 ナイフを持たされ、刺す痛み、 刺される痛みに耐えながら過ぎていく一秒一秒がとてもこの世のものとは思えないほど永く感じるのだ… まさに悪魔の時間… この状況を打破する方法はないのか… オレはそっと恵理の顔を見た。 驚くことに恵理の顔に動揺はなかった… 恵理がなにを考えてるのか、この時のオレには全く分からなかった。 動揺を見せない恵理の姿にオレは、なにか策があるのではないかと、考えたりもした。 オレと恵理は、刃物を突きつけられ、強制的にある部屋へと連れていかれた。 そう…… あの時とは少しだけ、外観は変わってるものの、部屋の造り、 この部屋から読み取れる異様さは変わることはなかった… 悪魔の殺し合いイベント部屋である。 オレたち二人はそこに入れさせられ、鍵を閉められた… いくつもの監視カメラが嘲笑うかのように設置されており、 壁の端と端には何種類かのナイフが壁に掛けられていた… この両側に用意されたナイフをオレたちはそれぞれの場所で選ばされ、 スピーカーからの合図とともに、儀式は始まる。 そしてスピーカーからの、狂気に満ちた台詞を浴びせられる。 大体の人間がここで自分の持つ理性を、じわじわ破壊され、殺人マシンと化していくのだ。 中には精神崩壊を起こした者もいたようだ… そうなった彼らの行方を知る術は無かったが、おそらく、非人道的な仕打ちが待っているのだろう。 そして今、またその場に来てしまった自分がいる。 これから起こることを想像するだけで心の底から、恐怖、悲しみ、怒り、 あらゆる感情が混ざってなんと表現したら良いか分からないような感情が溢れ出していた… 体を感情のままに預け、気を抜いてしまったら、オレの精神は崩壊してしまうだろう… 諦めという思考結果と共に… 恵理はというと、目を閉じて、何かを考えているように見えた。 どうして恵理はこのような状況になっても、あんなに落ち着いてられるんだ、 育ちの違いか…… 背負ってきた苦労の重さが違うからか… 恵理に対する尊敬の念と哀れみを覚えた。 そして、オレはひとつの決心をした。 オレが恵理のために出来ることは、自分が犠牲になって、この勝負に負けることだ。 そして恵理の手を汚させないためにも、自分で自分を刺そう… それが一番の良策であろう。 オレはそう思った。 だが悪魔の声はそれさえも許しはしなかった。 「一つだけ忠告しておく。 自分で自分を刺すような真似はするな! どちらかがそういった行為をした場合、お前ら二人には明日を見る資格はなくなるということは覚えておけ! それで残った場合、残った者の方が拷問という苦痛を感じて死ぬということもな!ハハハハハハハ!!」 スピーカーからの悪魔の第一声だった… ふと恵理を見ると、先程の冷静さは無くなっていた… その眼差しは絶望に満ちていた。 恵理もオレと同じ答えをオレよりも早くに出していたのだろう… もうオレの頭の中は解決に向けて正常に働くことはなかった… ただただ、この場から逃げだしたい!! 夢であってほしい!! そう心の中で念仏のように唱えるだけであった… スピーカーの声の誘導のもと、オレと恵理は、両側に掛けられたナイフを選ばされた。 そして定められた位置に立たされる… ついにここまで来てしまった…… オレの正面に立つ恵理の表情を見ることは出来なかった。 この時は恵理はどのような表情をしていたのだろうか… そしてスピーカーからの合図が… 「さあ、殺し合うんだ!!」 ついに始まってしまった… 悪魔の時間が… そう思って、何秒もたたなかっただろう。 恵理は、勢い良くオレに近づき、オレの腹部を刺していた…… 多量の血が腹部から噴き出していた。 恵理…… この時もオレは恵理の表情を見ることは出来なかった… → Bad day(8) 血と涙 ★→この怖い話を評価する |
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