死のランドセル(2) |
創作の怖い話 File.103 |
投稿者 でび一星人 様 |
|
と、突然サトウは目の色を変えて、奇声を発しながら抵抗してきた。 「ワ タ サ ナ イ! ワ タ サ ナ イ !! ワ タ サ ナ イ !!!」 ずっとそう繰り返しながら、ものすごい形相でウチを睨んできよる。 ウチは絶対にサトウがこうなったのは、このランドセルのせいやと確信した。 ランドセルを奪おうとした時に、見えたんや。 ランドセルを普段かけてる肩口の服がはだけた時に、 そこに奇妙なアザが出来てるのが・・・。 サトウは、それ以来ウチを拒絶するようになり、家にすら入れてくれんようになった。 【ランドセルを奪う者】というふうに認識されてしまったんやろうか・・・。 その後一度サトウを見舞いに行ったのだが、サトウはハサミを持って出てきたので、 さすがに身の危険を感じ、怖くてサトウの家には行けんようになってもうた。 登校時とかにサトウの家の前を通る時、 たまにサトウがベランダの窓越しに外を見てる時があった。 必ず、ランドセルを背負い、それをチラチラ見てはニヤケるように笑っとった。 当時の笑顔の面影は、もう微塵も残っとらんかった。 ・・・更に数週間が経った。 ある日、下校中サトウの家の前を通った時に、人だかりが出来とった。 もしや、と思い、駆けつけてみると、悪い予感は当たるもので、 サトが部屋から担架で運び出されてきとった。 後から聞いたんやが、第一発見者は母親で、なにやら、 「娘の部屋から奇声が聞こえてきたので、ただ事じゃないと思い、 部屋のドアを開けたら、笑ながら白目を剥き、倒れていた。」 ということだった。 私はただ、人ゴミに紛れて、サトウが担架に乗せられて運ばれて行くのを、見ていた。 涙が出てきた。 ステキな笑顔のサトウ。 落ち込んだ時、励ましてくれたサトウ。 よく一緒に宿題をやったサトウ・・・(ていうか、答え写させてもらってた)。 助けることが・・・できんかったんかな・・・。 泣いている私に、「・・お姉ちゃん・・・。」 「あ。」 振り向くと、同じく下校中だった双子の弟が話しかけてきていた。 ウチは、サトウに起こった出来事や、思った事を弟に話した。 弟はうんうんと頷き、じっとウチの話を聞いていた。 「・・・なるほど。 で、お姉ちゃんは、そのランドセルが怪しいと?」 ウチが頷くと、 弟はサトウの家のドアを開け、慌てて救急車に母親も乗り、鍵が開いたままのサトウ家に不法侵入した。 「・・たしかに・・・このランドセル・・・。 気味がわるいなぁ・・・。」 弟は、部屋に置いてあったランドセルを見つめながら言う。 そしてしばらくぶつぶつ独り言を言ったかと思うと、 「・・・一体・・・どこでこんな物騒な・・・」 弟は汗だくになっていて、急いでウチをつれて部屋を出た。 そしてなにやら紙のようなものを取り出し、何やらえんぴつで【模様】を書き始める。 「とにかく、お姉ちゃんはそこでじっとしてて・・・ こんな物をこんなところに置いてたら、大変な事になるよ・・・。」 と、慌てるようにウチに言った。 ウチは唖然として弟を見とった。 弟はその模様を書いた紙にセロテープをつけ、部屋にまた入っていった。 10分が経った。 弟は、部屋から、ランドセルをもって出てきた。 ランドセルにはさっき弟が模様を書いた紙が貼られていた。 「なぁ・・一体、何があったんや・・・?」 気になるから私は聞いた。 弟は、自分のランドセルからハサミを取り出して、 「・・このランドセルな・・・。」 と言って、ランドセルのフタの部分をおもいっきりハサミで切り裂いた。 「な、何するんや!かーくん(弟の名前)・・・!」 と、ウチが言った瞬間、凄いものが目に飛び込んできた。 なんと切り裂いたランドセルのフタの部分から、何十枚という、 なにやら御経のようなものが書かれている御札がゴソっとあふれ出てきたんや。 弟は、「・・・お姉ちゃんは・・・無数のうめき声とか、聞こえない?」 と聞く。 「いや・・まったく・・。」 「・・そう。 なら気にしないで・・・。」 弟は、自分のノートにまたなにやら【模様】のようなものを書き、 そこにペタペタと、ランドセルから出てきた御札を貼り始めた。 「・・・学校の帰りにね、最近、近所のお寺に遊びにいってたんだ・・。 そこのお坊さんが、いろいろと教えてくれてね・・・。」 弟は全部の御札をノートに貼り終えると、今度はランドセルの回りに埋め込まれた石をハサミでほじくり出した。 石の裏・・つまり、ランドセルに埋め込まれる部分には、 【呪】や【陰】等、まだ習ってない漢字が一文字づつ彫りこまれていた。 かーくんはその石も、 一つ一つ丁寧に【模様】を書いたノートにセロテープで貼り付け、それを自分のランドセルに仕舞いこんだ。 「・・・お姉ちゃん・・・。 僕、これからお寺お坊さんの所に行くけど、来てみる?」 私は、「こ、こわいから家帰るわ・・・。」 と断った。 「・・そう・・。別にいいよ。 お姉ちゃんには誰もついていってないみたいだから、大丈夫だよ・・。」 と、弟はワケの解らない事を言ってお寺の方に歩いていった。 数日後・・・。 サトウは新しいランドセルを買ってもらい、登校してきた。 体はまだ痩せていて、体調は本調子では無いみたいやけど、 最初の頃みたいに元気な笑顔が見られたから安心した。 ★→この怖い話を評価する |
|
[怖い話] [創作の怖い話3] |