死のランドセル(1)

創作の怖い話 File.102



投稿者 でび一星人 様





ウチの名前は鍋衣。

皆はウチの事をなっちゃんって呼ぶ。


今から話すのは、ウチが小学一年生の頃のお話。


当事、今年からいよいよ小学生。とワクワクしていたウチは、

まずは学年のトップに立てるよう、強そうな男子を絞めてまわなあかんな。

と思っとった。


 学校生活も一ヶ月ほど経つと、いろいろ見えてきた。

【上級生ガキ大将】がね・・・。

まーこの話は置いとくわ。

子供社会の力関係は、言わずとしれてる事やもん。

教師はちゃんと見抜けるように頑張りや!

 さて、今日アナタにお話するのは、

この学校に入って最初に、仲良くなった友達の【マリカ】って子に関するお話。

マリカっていうのは下の名前で、名字は佐藤っちゅーねん。

ウチはよく、「サトウ」って呼んどったけどな。

ちなみに、ウチの学校でのアダは【華虎】

最初、サトに、「名前、なんて読んだらいい?」って聞かれたから、

「適当でいいで」って言うたら、それがアダ名になってもうたんや。

何やら、男子とケンカしてるところ見られてもうたみたいで、

その姿が【華のように軽やかで、虎のように獰猛】やったかららしいけど・・・。


 サトウは、すっごく笑顔がステキな子やった。

他のガキ共と違い、少し控えめで、先生にもそんなにゴネたりする子でもなかった。

だから良く頑張る割に、褒められる事は少ないんやけど、大人からも、子供からも、

皆から愛される子やった。

 サトウは親が経営してるお店のお客さんからランドセルを買ってもらってた。

入学式の数日前に、アンティークショップに連れて行ってもらい、買ってもらったらしい。

サトウ、すごく嬉しかってんて。

店に入って、なぜかそのランドセルに目が惹かれたらしい。

迷わず、「これにする。」って決めたらしい。

実は私もそのランドセルを見せてもらった事があるんやけど、

なんというか、不思議な色をしてた。

色というか、ランドセルの周りに、紫のような、不思議な色のちいさい石が埋め込まれてるみたいな・・・。

  その時に、おかしいと気付くべきやったんかな・・。

 サトウはそのランドセルを、肌身離さず側に置いてた。

すごく気に入ってて、休み時間、教室を離れる時は、いつもそのランドセルを背負って嬉しそうな顔をしていたっけ。

 入学してから一週間くらいが経つと、

サトウに異変が見られた。

まず、目の下のクマが目立つようになった。

まあそれはメガネで隠す事ができるんやけど、

今までのステキだった笑顔が、ほとんど見られなくなった。

 授業中も、何やらうわのそらな感じで、 笑う時といったら、そのランドセルを見つめてる時だけやった。

一ヶ月もすると、サトウの異変は目にあまるものがあった。

学校も休みがちになり、

極端に痩せだし、

性格も荒々しくなった。

今思えば、本当にウチは鈍感なんやと後悔するけど、 

まさかあのランドセルが原因なんて、まったく思いつかへんし、結びつかんかったんや。

「サトウ、どした?最近体調悪いんか?」

って聞いても、

「・・・うううん。 平気・・。」って、

我慢強いサトウらしい返事がかえって来るだけやった・・・。

 入学してから、二ヶ月が経った。

サトウはとうとう登校拒否児になってもうた。

心配やった私は、休みの日にサトウの家にお見舞いに行ってん。

ピンポーン

チャイムを押す。

・・・誰も出てこぉへん・・・。

ガタガタ・・・

ちいさな物音が中から聞こえる。

サトウが中にいるのはそれで察することが出来た。

ドンドンドン!

「サトウ? ねえサトウ?? おるんやろ?  なぁ?」

ウチは心配やったから、ドアをドンドン叩いて、必死にサトウを呼んでん。

すると、  ガチャッ・・  ドアが開いた。

頬もこけてしまい、 メガネでも隠せないくらい大きな目のクマが出来て、 

骨と皮しか無いような細い腕のサトウが出てきた。

「・・・サトウ・・・ どしたんや・・・? 学校も来ぉへんで・・・。 心配しとったんやで?」

「・・・・」

サトウは無言やった。

目の焦点も合ってない。

パジャマ姿のサトウを見て、私はふと、違和感を感じた。

肩口から脇にかけて、キラっと光るモノが見える。

(あのランドセル背負ってる・・・。)

そこで、私はようやく疑問に思った。

サトウがこんなふうになったんは

ひょっとしてあのランドセルをを着けてるからと違うんか?

「サトウ!そのランドセル、ちょっと貸しぃ!!!」

私はサトウから無理やりランドセルを奪おうとした。



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