被災者の無念 |
摩訶不思議な怖い話 File.44 |
投稿者 二階堂タカヤ 様 (mixiのコミュニティ「平成耳袋」の管理人様です) |
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学校のクラスメイトの池上さんの体験談だ。 池上さんはいわゆる見える人で、 最近も南校舎の外部階段の下に若い女の子がいると指差していたが、私が見ても人がいるようには見えなかった。 池上さんが言うには、これだけ大きい学校なら何人か自殺してたっておかしくないだろうとの事。 そんな池上さんもこれまでの人生経験豊かで、阪神・淡路大震災にもボランティアとして参加していた事があった。 四日間の日程で現地に入り、倒壊した家屋の撤去作業などを手伝ったそうなのだが、 とにかく現地は悲惨そのものだったそうだ。 池上さんの作業中にも瓦礫の下から焼け焦げた身元不明の遺体が発見され、池上さんは近くでその遺体を見てしまった。 辛うじて人間の形をしていたが、その表面には凹凸などほぼ無く、凄まじい臭いがしていたという。 ボランティアの期間が終わり、アパートに帰宅した池上さんだったが、その日から現象は起こり始めた。 久々の自室に帰った池上さんは、玄関を入った瞬間から、何かが焦げたような臭いが立ち込めている事に気がついた。 まさか部屋の中で何かが燃えているのかと思った池上さんは、 慌てて室内の火元を探して回ったが、どこにも火の手など上がっていない。 もしかしたら、現地の臭いが体に染み付いてしまっているのではないかと思った池上さんは、風呂に入る事にした。 風呂から出ると不思議とその焦げ臭さは消えてなくなり、池上さんは疲れも手伝ってその日はぐっすりと眠る事ができた。 その翌日の晩の事だった。 池上さんは大きな揺れで目を覚ました。 自分の寝ていたベッドが横滑りをしながら揺れていたのだ。 大地震が来た!と思った池上さんはベッドから飛び出すと、そのまま一直線に部屋の外へ転がり出たが、 アパートの廊下には人っこ一人姿はなく、深夜の静けさそのものだった。 あんなに揺れたのに何故みな騒ぎを起こしていないのか、不思議に思いながら部屋に戻った池上さんの前で、 相変わらずベッドだけがガタガタと横滑りをしながら動いていた。 さすがに度肝を抜かれた池上さんは、着の身着のままに同じアパートの友人、 菅さんの部屋に転がりこむと、その晩は一睡もせずに過ごした。 池上さんと菅さんは朝を待って、池上さんの部屋へと戻ってみたが、ベッドは動いてはいなかった。 代わりに、またあの焦げ臭い匂いが部屋の中に充満していたのだ。 これはまずいと、菅さんはすぐに実家に電話を入れた。 菅さんの実家はお寺で、もしかしたら霊を祓う事ができるかもしれないと踏んだわけだ。 翌日に、菅さんの父が部屋を見てくれるという事になり、その日も池上さんは菅さんの部屋で夜を過ごした。 そして翌日、池上さんの部屋を訪れた菅さんの父は、「よく二日も無事でいられた」と言ったそうだ。 菅さんの父に招かれて部屋を覗いた池上さんは絶句した。 自分が部屋にいない間に、部屋の押入れの襖に人型の焦げ目がついていたのだ。 菅さんの父が言うには、焼死した人間の強い無念が池上さんに憑き、その無念さを訴えているという。 池上さんはその日のうちに菅さんの実家に連れて行かれ、お払いをしてもらったそうだ。 その後もしばらくは、まれに部屋の中で焦げた匂いがする事があったが、 部屋に盛り塩を続けるといつしか匂いがする事もなくなったという。 ★→この怖い話を評価する |
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