重々夢

摩訶不思議なの怖い話 File.29



投稿者 木野子 様





ある晩、私はいつものようにベットに横たわっていた。

うつらうつら…眠りへと入っていく夢か現かの境目、突然私の体に緊張が走る。

金縛りかな?とまだ寝呆けた頭で考える。

私にとって金縛りになるのは日常茶飯事なことなので、これといって焦りも何も無い。

金縛りといっても、ほとんど体が動かなくなるだけで特に霊的なものが見えるわけではない。

そういう場合は身体的な疲れから来るものだと思う。

だからその夜も、いつものように金縛りにあった状態のまま寝てしまおうと……

が。

トン トン トン トン



誰かが階段を上ってくる音がしなかったか。

私の一人暮らしの部屋は2階なのだけれど玄関は1階にあり、そこから2階へ続く階段がある。

その階段を誰かが上がる音が聞こえた。

トン トン トン

また。

鍵はオートロック。

今、アパートに私以外の誰かがいるはずがない。

体は依然として動かない。

どうしよう

怖い

足音は近づく。

トン……

階段を上り終えたのだろうか。

階段から部屋までは3メートル程の廊下が続く。

近い!

何とか体が動かないかと全身に力を入れる。

すると手が動いた。

電気!!

ベットの脇にあるスウィッチを暗闇の中探る。

ダダダダダッ!

奴が駆け出した!

パチッ……

電気を付けた瞬間、目も覚めた。



あ。今のは夢だ…

うなされていたのか汗がひどい。

やけにリアルな夢だったなと思った。

消したはずの部屋の電気は付いていた。

眠りながら付けてしまったらしい。

まだ朝まで時間がある。

眠ろう…

少しして、眠りに入ろうとした瞬間金縛りにあった。

さっきの夢と一緒だ。

少しばかりの緊張が走る。

ま さ か

トン トン トン トン トン トン

その音に寒気を覚えた。

音の主は階段を上り終える。

もちろん私以外の誰かがいるはずはない。

ダダダッ!

私の部屋までの3メートルを駆けてくる音がする。

さっきの夢のように覚めることの無い、現実。

体も動かない。

どうしよう

怖い 怖い

ドンドンドン!!!!

部屋の扉を叩く音がした。

と、金縛りが解ける。

パチッ

同時に目が覚めた。

今のは夢だ……

うなされていたのか汗がひどい。

それにしてもやけにリアルな夢だった。

気味が悪い。夢の中で夢を見ていたのか。

ふと横に目をやると

誰かが私の隣に横たわっている!!

「ひろ…」

そうだ。今夜は友人のひろが泊りに来ていたんだった。

一人じゃないことに安堵してしまった。

たかが夢に何をそんなに怯えているんだろう私は。

再び、眠りにつこうとした。

すると、ひろがくっついてくる。

寝呆けてるのかなと思いながら、頭をなでてみる。

ひろの頭の温かさが私に心地の良い眠気を与えた。

その瞬間、体が動かなくなる。

また!?

トン トン トン トン

階段を上る音がする

ダダダッ!

廊下を駆けてくる音がする。

ドンドンドン!!!!

部屋の扉を叩く音がする。

次 は な ん だ

もうダメだ…

恐怖が体中を支配する。

金縛りは解けない。

…でも夢と違う事実が一つ。

今、私は一人じゃない。

ひろが隣に寝ている。大丈夫。

ひろがいるから。

ひろはいない。

ひろがいるはずがない。

ひろは初めから泊りになんか来ていないと、この時唐突に気付く。

何故、ひろが泊りに来ていると思ったんだろうか。

じゃあ

今確実に私の左手に感じる温もりは何なんだろう。

ガチャッ!!!

音の主が部屋に侵入した瞬間、金縛りが解けた。

と、同時に目が覚めた。

恐ろしい夢を見てしまった。うなされていたのか汗がひどい。

それにしてもやけにリアルな夢だなと思った。

その時、冷え性の私の左手だけ温かかった。

消して寝たはずの電気が付いていた。

これが何を意味しているのか私には分からない。

翌日、私は大学でひろにその話をした。

「良かったね。目が覚めて。」

「そうだね。起きれなかったかもしれないね。」

…箱のなかに箱があって、その箱の中に箱があるというように、

夢の中の夢の中の夢に私がいたのだとしたら。

一つ一つの夢を順序立てて覚ましていかなければ、

私は一生、現実に辿り着く事無く夢から出られなかったのかもしれない。

ひろが言った。

「実はこれも夢なんだよ?」

私たちは笑った。

内心私はぎょっとした。



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