連れてって

摩訶不思議なの怖い話 File.19



投稿者 mj 様





漁師さんって、実はすごく『仏さん』に会うことが多いそうです。

漁に出るとき、海に浮かぶ彼らを見つけるそうで…

事故者や入水自殺者、もはや性別すら分からないブクブクに膨れた者まで様々で、

始めこそ吐き気を催すものの、次第に慣れてしまうそうです。

その日漁師のAさんは、朝早くから漁に出ました。今日の漁は長く一日がかりです。

一日の段取りを考えながら海を眺めていたその時、

「あ」

仏さんです。

ベテランのAさんは最早恐怖は感じません。

それどころか、いつもこうして仏さんを見つけると「かわいそうだから」と言って、

陸まで連れていってあげていました。

「例え身元がわからなくてもせめて誰か供養してあげないと…」と。

Aさんはいつもの様に仏さんをのせてあげよう、と思ったのですが、今は漁への"行きしな"です。

帰りしなだと楽なのですが、行きしなだとどれ位収穫で荷物ができるかも分からないし、なんせ漁の予定も狂ってしまう。

「おーい、仏さん。すまんが帰りに拾ってやるから。」

そう言ってAさんは先を急ぎました。

しかしその日は途中の予想外の悪天候もあり、Aさんの船は結構流されてしまったのです。

もちろんAさんが陸に帰る分にはなんの問題もないのですが、

仏さんの位置が全く想定できなくなってしまいました。

「参ったなぁ、ここまで波が強いと、あの仏さんは相当遠くにいってしまっただろうな。」

Aさんは申し訳ない気持ちを抱えながら陸に向かっていました。

ドン

その時、船底に何かが当たる鈍い音。

船は止まってしまいました。

「エンジンの故障かな?」

Aさんは機器系統を調べてみましたが、異常はありません。

「何か絡まっているのか?」

船の側面を見たAさんは目を見張りました。

そこには、今朝見た『仏さん』がぴったり、船にくっついていたのです。

あり得ないことでした。あの位置から、この波の流れで、ここまで距離を………

「なんとしても、連れていってほしかったんやろうなぁ…」




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