国境付近にて

摩訶不思議な怖い話 File.165



 投稿者 元傭兵 様





私が以前体験した、ちょっと不思議な事を書いてみようかと思います。

最初に断っておきますが、私の経歴はかなり特殊で、

もし他人が私と同じような経歴を語ったとしても、同じような経歴を持つ私です

らにわかには信じられないと思います。

なので、私の経歴等について信じられない方はフィクションと思ってスルーしてお読みください。

では本題です。

これは私が学生時代にある警備会社でバイトをしていた時の話です。

警備会社でバイトと言うと交通誘導等を思い浮かべるかと思いますが、

そっち方面ではなく、所謂外資系資本のセキュリティーサービスで、

かなりの荒事までやるような会社です。

具体的に言うと、自動小銃や短機関銃をぶら下げて、

海外の遺跡発掘現場や鉱山を警備したりといった内容です。

1993年12月から1994年1月にかけて、

当時私はタイで沈没船のサルベージ現場を警備していました。

大戦中に沈没した某潜水艦の関係で、まあ知る人ぞ知る現場です。

その仕事の任期が終わり、帰国準備をしていたときに別任務が加わりました。

カンボジア国境付近で交戦している

正規軍を取材しているカメラマン他数名を警備せよというものでした。

任務自体はそんなにたいそうなものではありません。

基本的には前線には出ずにカメラマンと行動を共にして、

万一敵の残党と遭遇した場合は実力で排除せよという程度。

要するに、カメラマンと一緒に戦場の中でも安全と思われる場所をプラプラしているだけです。

事実最初の取材先は迫撃砲中隊(前線としては最も後方)でした(笑)

そして、その日の深夜にあった敵の攻撃(ちょうどその日は新月の前日で、

敵の攻撃が予想されていました)に対して準備万端の迫撃砲が次々と火を噴きました。

最前線では味方にも多少被害が出たようですが、

基本的には予測された攻撃に対する一斉迎撃ですから負けるわけもなく、予定通りの勝利です。

カメラマンも次の日には、

敵が一掃されて安全になったであろう最前線へ撮影に向かうことになりました。

迫撃砲で穴だらけになった森や丘を歩くこと数時間、

辺りには前日の砲撃でボロボロになった敵兵の死体が転がっています。

カメラマンは熱心に写真を撮っていますが、正直こんな写真を何に使うんだと思いましたね。

政府広報に使うなら基地内の写真で

事足りるはずだし(事実前日まではそういう写真しか撮っていない)

単に死体マニア?というやつでしょうかね。

そんな中で事件は起こりました。

前方の藪から突然自動小銃が火を噴いてきました。

タタタタタ…

フルオートで一連射、それきり射撃は止みました。

この奇襲で味方(といっても私とは直接関係ない

地元正規軍兵士ですが)に1名犠牲が出ました。

すぐさま味方の小隊が藪を取り囲み、徐々に包囲を狭めていきます。

やがて、数人の兵士がうつぶせになった1人の兵士を取り囲みました。

私はカメラマンと一緒に少し離れた所からその様子を見ていました。

すると、そのうちの一人が、

足でうつぶせになった兵士の顔をけり上げ自分の方を向かせていました。

その直後、蹴りあげた兵士が叫び声をあげ、

同時に持っていた自動小銃で倒れていた兵士の頭部に全弾撃ちこみました。

あわてて周りにいた味方の兵が取り押さえましたが、

撃った兵士は意味不明の奇声を上げ続け何が起こったのか不明。

我々も現場までいって確認したのですが、

うつぶせの兵士は腹部に大きな傷を負っており、身体は硬直していました。

死後硬直…

私の記憶では、死亡後数時間はかかるのでは?

前日の砲撃で受けた傷が元で死亡したなら死後硬直しててもおかしくはない…

じゃあ、自動小銃を連射したのは誰?

仮に、死後硬直でたまたま死体が銃を撃った(現実にそんなことが起こるかは知りません)として、

反動の強いAK47をフルオートで撃って、そのまま握り続けていられるものか?

結局、いくつもの謎を残したまま、

現場には銃身の熱くなったAK47と既に死後硬直が

進行している首なし死体だけが転がっていました。

同行したカメラマンも、さすがにこの不可解な現場は撮影していませんでしたね。




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