お堀の魚 |
摩訶不思議な怖い話 File.135 |
ネットより転載 |
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俺はばあちゃん子で、いつもばあちゃんと寝てたんだが、怖い夢を見て起きたことがあった。 たぶん5歳くらい。 夢の内容は、ボロボロの廃屋みたいのが三軒くらいあって、その手前に堀があり、 そこに信じられないくらいデカい魚(ガキのオレの倍以上)が泳いでる、というもの。 最初は笑ってなだめてくれてたばーちゃんだったが、「魚」と言った途端に顔色が変わった。 そして、夜中なのにも関わらずどこかに電話をかけていた。 両親も起きてきていて、出掛ける準備をしている。 俺も眠いながら着替えさせられて、父ちゃんの運転する車で出掛けた。 着いた先はひいばあちゃんち(ばあちゃんの実家)だった。 ばあちゃんが呼び鈴を押すと、親戚が出て来て「魚でわかったから来た」とか言ってた。 ひいばあちゃんの部屋にいくと、ひいばあちゃんが亡くなっていた。 目も口もかっと開いて、ああ、死んでるんだなと直感的にわかった。 ひいばあちゃんの家は亡くなったひいばあちゃんと、 その親戚のおばさんの二人暮らしだったから、うちの両親やばあちゃんが色々と葬式を手配した。 ばあちゃんが教えてくれた。 「オラが魚の夢を見ると、必ず親戚が死ぬんだ。でも今回は見なかった。でもお前が変わりに魚を見た」 だからどうしろということはなく、俺もなんとなく、そうか、そういうものなのか、と思った。 ばあちゃんと別に寝るようになってからは、ばあちゃんは単独で魚の夢を見ていたようだ。 やがて、俺も遠くの大学に進学し、実家を出ていってしまった。 久しぶりに親が電話をよこして、ばあちゃんの様子が変だから帰ってこいと言う。 入院でもしたのかと言うと、そういうわけではない、ボケたわけでもないという。 でも気になるので帰省した。 ばあちゃんの部屋はもぬけの殻だった。 大切にしていた着物も、趣味の書道道具も、何もなく、ただ布団しかなかった。 親によると、急に片付け始めて、箪笥なんかも全部庭で燃やしてしまったという。 「ばあちゃん、何かあったのか」 孫になら話してくれるかと、聞いてみた。 ばあちゃんは言った。 「魚を見た」 「でもあれは本当は魚ではねがった」 「堀でもねえ、壊れた家でもねえ」 そしてばあちゃんは黙ってしまった。 ばあちゃんはその日の夜、心不全で亡くなった。 その晩、俺は単独で魚の夢を見た。 廃屋の中には、前はわからなかったが、たくさんの人が居て、苦しみの声を上げているようだった。 堀は、堀というより深い溝で、赤いような緑のような、嫌な色の液体で満たされていた。 魚の背びれが見える。 大きい魚が浮き上がってくる。人の顔ほどもあるウロコが見える。 いや、あれは人の顔だ。 魚が地鳴りを立てて跳ねた。 魚は魚ではなく、死人が魚のかたちに集まったものだった。 ばあちゃんやひいばあちゃんの顔があったかはわからない。 でもなぜか、俺も死んだらあの魚になるんだな、と漠然と理解した。 俺も、身辺整理を始めようかと思う。 ★→この怖い話を評価する |
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