逢いたくて |
感動の怖い話 File.6 |
投稿者 二階堂タカヤ 様 (mixiのコミュニティ「平成耳袋」の管理人様です) |
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池上さんから伺った話で、池上さんの奥さんの従兄弟、富沢さんが体験したという話だ。 富沢さんが高校二年の時の話し。 富沢さんは旭川市に住んでいて、中一から付き合っていた洋子さんという彼女がいた。 二人は同じ歳で、同じ高校に通うようになったが、 高校に入ってすぐ、洋子さんは親の転勤で岩手に引っ越してしまったという。 今でさえメールや携帯で連絡をとりあえるが、当時は手紙か家電話しか連絡手段がなく、 富沢さんは引っ越した後も頻繁に洋子さんと手紙のやりとりをしていたそうだ。 手紙が届いたらその日のうちに返事を書き、翌日には投函する。 距離は遠くてもお互いの想いは近くにあるかのように、二人のやり取りは続いていった。 その歳の富沢さんの誕生日、洋子さんから手編みのマフラーが届いた。 同封の手紙には ”北海道はこれから、どんどん寒くなるから、これを巻いて風邪ひかないように”と書かれていた。 それからも、手紙のやり取りと親公認の月一の電話が続いた。 やがで季節は初冬になり、さすがに北海道は防寒対策をしないと外に出られないくらいの厳しい寒さが訪れていた。 その日も芯まで凍りつくような寒さで、富沢さんは洋子さんに貰ったマフラーを首に巻き登校することにしたそうだ。 マフラーを首に巻き、通学バスに乗る。 幾つか目のバス停で、同じクラスの赤西さんが乗車してきた。 赤西さんは最近転校してきたばかりで話しがあい、友達になった人だった。 赤西さんは富沢さんと目があうなり「お前、大丈夫か?」と尋ねてきた。 何のことかわからず、不審に思い赤西さんを問いただすと「今はまずい、学校に着いたら教えてやる」とだけ言われた。 仕方なく、もやもやとした気持ちを抱えながらも、富沢さんは学校に着くまで大人しくしていた。 そして、学校にバスが到着するなり、赤西さんは富沢さんの手を引いて、校舎の陰に連れていったそうだ。 「お前、そのマフラーどうしたんだ?」 首に巻いたマフラーを指差し赤西さんが尋ねる。 別段彼女がいる事を隠すつもりもなかった富沢さんは、遠距離恋愛をしている彼女から貰ったものだと赤西さんに告げると、 「その彼女ってこんな子じゃないか?」 と洋子さんの姿形の特徴を全て言い当てた。 一度として赤西さんの前で洋子さんの話をした事がなかった為、富沢さんは驚きを隠せなかったという。 理由を求められた赤西さんは困ったようにこう話したそうだ。 「いや、さっきからお前の首に手を回して、お前を見ながら笑ってるんだよ、その子。 特に悪意は感じないんだけどさ、なんか微笑み方が悲しそうだから」 そこまで話した時に始業チャイムがなり、会話は中途半端なところで途切れてしまった。 最初、馬鹿な事を言うやつだと赤西さんの話を否定しようとした富沢さんだったが、 赤西さんが話してくれた洋子さんの特徴は確かに全て当てはまっている。 漠然とした不安が富沢さんの中に生まれたのは言うまでもない。 昼休みになり、富沢さんは赤西さんを呼びとめ、まだ洋子さんは見えているのかと尋ねてみた。 だが赤西さんは首を傾げた。 「朝はあんなにはっきり見えていたのに今は見えない」 と赤西さんは不思議そうに言う。 より一層強くなる不安を抑えきれなくなった富沢さんは、授業が終わると家に急いで帰ったのだが・・・ 不安は現実となってしまった。 家の玄関を開けると、いつもはパートに行ってるはずの母親が青ざめた顔で電話をしていた。 そして、受話器を置くと富沢さんに「今、洋子ちゃんが亡くなったって」と告げた。 洋子さんは今朝方交通事故に遭い、搬送先の病院でたった今息を引き取ったという。 亡くなる直前まで、洋子さんはうわ言のように富沢さんの名前を呼んでいたそうだ。 ★→この怖い話を評価する |
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