既視感

本当にあった怖い話 File.7



投稿者 木野子 様





あれは確か去年の秋頃のこと。

原因不明の発熱のために、大学を3日程休んでいる時にそれは起こった。

熱が出ているだけで、他に特に異常は見られなかったので、思わぬ休暇を満喫していた私だった。

休みの一日目、手を付けたまま読み終えることなく蓄まっていた文献などに目を通し…、

が、やはり途中で投げ出し携帯でmixiニュースをみていた時だった。

ある一つの事件に関するニュースを読み始めた時、ふと何か違和感を感じた。

あれ、このニュース知ってる…

何かで既に知っていたのだろうか。

mixiにログインしたのはかなり久々のことで、

mixiのニュース欄でこの記事を以前に一読したことがあったというわけでは無さそうだ。

ではTVで観たのか?新聞か?

それは有り得ない。

日頃の忙しさから、その当時TVなど存在すら忘れている程だった。

ましてや、一人暮らしの私が新聞など購読しているはずもない。

疑問に思いながらも、記事を読み進めていくと更に違和感を感じさせられた。

普段、私は文の内容を記憶することがとても得意で、

(といっても一語一句完璧に覚えるというのではなく、大まかな一文の内容、順序、全体の構成)

ニュース程度の短文であれば、一度読めば大抵頭に入ってしまうのだ。

だからこそ、記事に不可思議さを感じた。

私は、その事件を知っているのではなく、

mixiニュースに公開されているその事件についての記事そのものを知っている、という感覚を覚えたのだ。

つまり、あらかじめその記事を一読したことがあるかのように、文の先がみえる。

しかし、上述したように事実、読んだことがあるはずが無いのだ。

これかデジャヴと言われるものなのだろうか。

それともただの勘違いなのか。

もしかしたら、寝呆けながらmixiを開いてその記事を読み、

それを私が忘れているだけという可能性だってあるだろう。

悲惨な事件だとは思ったが、特に興味があるわけでもなく、

物事を深く考えることはしない主義なので、その記事に関してのことをすぐに忘れてしまった。

翌日も翌々日も、熱が下がらないので、内心しめたなどと思いつつ大学を休んだ。

私が休み始めて3日たった日の午後、心配した友人達が様子を見に私のアパートを尋ねてきた。

体調が悪かったわけでも無く休みを満喫していただけの私に、

わざわざお見舞い品を持ってきてくれた友人達に感謝と申し訳なさを感じた。

しばらく、

他愛もない談笑をして時間を過ごしていると突然思い出したように友人の一人(以下H)が言った。

H「そういえばA、あの話Sに聞いてみてよ。」

Aというのは、見舞いに来てくれた友人のうちの一人で、Sとは私のことだ。

するとAは、どことなく不安げな表情で私とHを交互に見やった。

Hは口元を微妙に歪め、

何か面白い事を見つけ顔がニヤけそうになるのを堪えてるというような表情だった。

Aの不安げな表情とHの薄ら気味の悪い表情を見比べ、何となく流れが読めた気がした。

Hがこういう顔をするときは大抵、私にとって良いことであった例しが無いのだ。

今回は一体なんなんだろう…

そんな気持ちで、可哀想な役を任せられたであろうAの言葉を待った。

A「S、こないだ○○県で起こった〜〜〜という事件のこと言ってたでしょう?」

驚いた。

まさしくそれは、私が先日mixiニュースで目にしたあの事件だった。

しかし…

私「その事件をあたしがAに話したの?そんなの知らない。」

全く覚えてないのだ。

いや、忘れているだけなのか?

もし本当に私がAにその事件に関して何か言ったのだとする。

大学を休み始めてからはこの日までAに会ってなかったので、

大学を休む以前にそのニュースを既に知っていたことになる。

やはり、休みの一日目にあの記事を読んだのは初めてではなかったのではないか?

それを以前に読んだ記憶も、Aに話したことも、全く覚えてないのは謎だがそうすると合点がいく。

mixiニュースでの記事を脳が覚えていたということに。

きっと夢遊病のようにいつのまにかmixiニュースに目を通していたのだろう。

そして、何かの反動でそれを思い出しAに話したのだろう、と自分を納得させることにした。

A「そんなはずないよ!」

普段おとなしいAが声を荒げたので驚いた。

しかし、その後続いたHの言葉には驚くどころではなく度胆を抜いた。

H「その事件起こったの、昨日だよ。」

私がmixiのニュースでその記事を読んだと確実に記憶しているのは、休みの一日目。

つまり、一 昨 日 だ。

事件が起こったのは昨日?

何かの間違いではないのか?

似たような事件が起こっただけなのではないのか?

H「同じ場所で同じような事件で同じ数の死者が?」

Hの言葉に返す言葉も気力も無かった。

さらに追い打ちをかけるようにAが言う。

A「しかもね、Sがあたしにその事件について話したの、9日前だよ。」

意味が分からなかった。

9日前に8日先の未来のニュースを私は既に知っていたというのだろうか。

Aの勘違いだろう!

私はそんな話をした覚えすらないのだ。

A「それはないと思うよ。Sと画材を買いに行った日で日にちは予定帳に書いてあるし。

それに、Sがあんまり真剣にその話するから次の日Hにその話して、

そんな事件知らないよね?って確認したもん。」

H「だから、昨日のニュース今朝知ってSに確かめようとお見舞いきたんだよ。」

とHは頷く。

お前達…体調心配してきたんじゃないのか…

とかはもうその際どうでもよく、私は泣きべそをかきながら聞いた。

私「私、Aに何て言ってたの?」

A「その事件が起きたすぐ近くに友達が住んでいるからすごく心配だ、って。」

そしてHが静かに、しかしどことなくおかしそうに尋ねた。

「ねぇ、友達って誰のこと?」

私には

その事件が起きた付近に

友達なんていない。

その県に行ったことすら無い。



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