フレームアウト |
本当にあった怖い話 File.6 |
投稿者 木野子 様 |
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高校時代、とても不思議な友人がいた。 彼女はいわゆる霊感体質で、霊を感じることが出来たようだ。 彼女を通じて、私も何度かそっち側の世界を覗き込むような体験をした。 「へぇ…どんな子なのソレ…?見たい。」 彼は顔をあげて私を見る。 その日、私はHという友人と大学のカフェで課題レポートを広げていた。 グダグダと、一向に進まぬレポートに何とかペンを走らせているといつの間にやら私の高校時代の話になっていた。 Hは興味津々らしく私に写真でもプリクラでも何でもいいから、その彼女を見てみたいと言う。 見たからといってHに何か彼女のことが解るような力がある様には思えなかったので、ただの好奇心だろう。 ちょっと待って…と、私は携帯のメモリーを過去に遡る。 カチカチ… 「この子だよ。」 Hに携帯を渡す。そこには教室の壁を背景に私に笑い掛ける彼女がいた。 H「へぇー可愛いねー。」 確かに彼女はとても可愛い…というか綺麗な子でいつも不思議な空気をまとっていた。 彼女に霊感があると言われてもみんな何となく納得してしまうような。 H「この子、霊感あるんだ?」 「多分ね。あ、そうだ。」 次の画像を見るよう、Hに言った。 言われたまま、次の画像を見たHは3秒程して「あぁ…」と、私の言いたいことを理解したようだった。 おそらく、Hは私の携帯の中に彼女ともう一人を確認したはずだ。 ちなみに、その写真を撮った時、教室には私と彼女しかいなかったのだが。 (何故なら2人で体育をさぼっていたから…) そしてもちろんシャッターを押したのは私だ。 H「写っちゃいけない物が写ってるね。」 そう。いわゆる『心霊写真』というやつだ。 先程の画像と同様に彼女は教室の壁を背景に立っている。その彼女の左下にそれは写り込んでいた。 全体が灰色掛かっていて、色を、生気を感じさせない。その一部分だけがまるでモノクローム加工されたかの様だ。 おかっぱのセーラー服の少女。 私と彼女の間を横切るようにして写っている。 「ね。彼女、霊感強いからそうゆうのが撮れちゃったみたい。」 その後、特に変わったことは無かったから良かったけど…と付け加える。 Hは無言で見入っている。 Hはあることがあり憑かれやすい体質になったのをきっかけに、 オカルト的なものに対し過剰反応するようになったらしい。 今回も例外ではないのだろう。きっと面白いものを見つけたと思って食い付いてるに違いない。 付き合っていたら限りが無いので私は、レポートに向き直ることにした。 が。 H「この子よりSだろ。この後何か無かったの??」 「は?」 Sというのは私のことだが、何故こんなことを聞かれるのか解らない。 H「霊は存在に気付いた人がいれば取り入ろうとするんだよ。」 写真を見てすぐに気付いたのは確かだけれど、それは私だけでなく、 彼女も同じだった。だったら、写した方より一緒に写っている方が危険なのではないのだろうか。 それに… H「Sは、この子だから霊が写り込んだのだと思ってるでしょう?」 私は頷く。 H「じゃあ、よく見てみて。この写真何かおかしいから。」 「うん?だから、おかっぱの女の子が…」 携帯を私に返しながらHが一瞬目を見開いた。 いつも冷静なHのこんな表情は見たことがないので、不安を感じた。 「霊以外に明らかにおかしい点が1つある。」 Hはそう言った。彼の言うことは大体正しい。 何か…あるのだ。 霊以外にこの画像の何が、どこがおかしい? 携帯に写る画像を見る。 「…解らない。」 特に他に異変は見られないのだ。色も風景もおかしなところなど無い。 Hはテーブルの向かい側から身を乗り出し言った。 「Sは、写すべき物を写さずに、写してはいけない物を写している。」 どういうことだ?まだ、解らない。写してはいけない物とはきっとモノクロな少女のことだろう。 では、写すべき物とは…? そしてたまりかねたHが言った。 H「何故、彼女の首から下しか写してな い の?」 ハッとして画像に目を落とす。確かに私は彼女の首から下しか写していない。 何故?聞かれて混乱する。 友人を撮るのにわざわざ首から下しか撮らないことなどあるだろうか。 普通は顔に焦点を置くのではないだろうか。 メモリー内の、人が写っている他の画像はどれも人の顔に焦点を置いたものばかりだった。 何故 この一枚は… 「Sは、彼女を撮ったんじゃない。霊を撮ろうとしてたんだ。」 Hがサラッと言った。 体にズシッとした重みを感じた。それは、例えるなら鈍器で殴られたような衝撃だった。 Hが言うことが正しいなら私は…無意識下に霊をとらえ対象を友人から霊に移したのだ。 画像の左下に写る少女。 もし私が友人の顔に焦点を置いていたなら、きっとフレームアウトしていたはずだ。 しかし、私はあえてそれを拾った。そのために友人の顔がフレームアウトした。 ゾクゾクする。 霊に対してではない。 私は自分自身に対して言い知れぬ恐怖を感じていた。 「つまりその存在に気付いてたのは彼女じゃなく、Sでしょ。本当に鋭いのか鈍感なのか…。 自分が気付いてることに気付いてないよね。」 Hはため息をつく。 前にも似たような事をHに言われた気がする。 「この写真撮った後、本当に何も無かった?耳鳴りとか寒気。」 どうだっただろうか… でもそういえば、教室でひどく耳鳴りがする時期があった。 あれはいつのことだったか。この写真を撮ってからすぐだった気もするがよく覚えてない。 H「でも、鈍感で良かったかもしれないね。気付いてることに気付いたら、憑かれるかもしれない。 逆にSが霊感があるのに憑かれにくいのは気付いていることに気付かないせいなのかもしれない。」 例え耳鳴りなどで、 霊が存在をアピールしたとしてもSが気付かないと思い込んでいる限りどうしようもないだろう。 そう妙に納得してしまったHは、レポートを再開した。 私はとてもそれどころでは無くなってしまった。 しかしHは視線はレポートのまま、私に更なる追い打ちをかけた。 「あと、もっかい霊の部分見てみ。」 私は叫びたくなった。 H「俺にはただの腕と体の一部としか見えないけれど。」 Hがさっき目を見開いた理由が分かった。 そこに写っていたのは、『セーラー服のおかっぱの少女』ではなく半袖からのびた腕だった。 残りはフレームアウトしてしまって見えない。 でも、私は確かに『おかっぱの少女』を記憶していた。 まさか写真の中の少女が移動したのか? 携帯を握る手が震え、じっとりとした嫌な汗をかいていた。 「そんなわけはない。Sの無意識の記憶と、画像の違いだろ。」 …なんて事だろう。 そんなことが有り得るのか? 私は、写真ではなく記憶にその少女を留めていたのだ。 それを写真での記憶と思い込んでいたということなのか。 私は、あの日、友人と私しかいないあの教室で、 いるはずのないあの少女を無意識にとらえ記憶していたのだ。 見えていたのだ。 だからこそピントを少女にずらした。やっぱり無意識に。 H「無意識って怖いね。 そういえばよく、Sは何も無いところで何回も振り返ってるけれど、あれも無意識なんでしょ?」 私は人目を憚らず叫んだ。 ★→この怖い話を評価する |
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