町田のスタジオにて

本当にあった怖い話 File.138



投稿者 okapi 様





僕は都内でギターの演奏活動やお仕事(ライブサポート、楽曲提供など)をしています。

これは、ある男女ユニットさんのサポートのお仕事を依頼された時のことです。

ちょうど今くらいの季節でした。確か、3年前。

そのユニットさんは女性ボーカル、男性ギターの二人組でした。

ちょっと大きい箱でやるので、

音数を増やすためにもう一人ギターが欲しい、とのことで声をかけて頂きました。

サポートに入る曲は5曲。

メンバーの住所の中間点をとり、町田の某スタジオで、3時間を確保しました。

リハーサルの当日。

入った部屋は、確か青が基調になっている部屋で、四角い部屋の3面が鏡張りだったのを覚えています。

結構古いスタジオで、かび臭い匂いがツーンとくる感じの部屋でした。

僕はありがたいことに、当時抱えていたサポートの案件が多かったため、

決まった事を忘れないように練習中は必ずボイスレコーダーでリハーサルの様子を録音していました。

というより、ボイスレコーダーを新調したので、

テンションが上がっていろんなところに持ち出していたというのもあったんですけどね。

その日もボイスレコーダーを僕の隣にあったベースアンプの上にセットし、リハーサルを開始しました。


2時間ほどが経過したでしょうか。

そのユニットの曲が、とても覚えやすいポップな曲調もあってかリハーサルはスムーズにいき、

全曲いい感じに仕上がってきました。

でもここまでぶっ続けで来たので、さすがに10分くらい休憩を入れようということになりました。


ちなみに僕は夏になると心霊系の話を求め続ける体質なので、

この時期は毎日毎晩怪談を見あさっている時期でした。

その日も好奇心とともに、譜面に決定事項をメモしながらそのユニットに問いかけました。

「ところで、なんか、怖い話とか体験談とか、あったりするんですか?ホラ、夏ですし(笑)」

みたいなことを僕が言うと、ユニットの男の子がこう言いました。以後A君とします。

A君「俺たち、ものすごくありますよ(笑)。

実はBちゃん(ボーカルの女性)がものすごい霊媒体質で、すぐ引き寄せちゃうんです。

俺、お経(なんとか経って言ってたけど忘れた)唱えられるんで、それでいつも払ってるんですけど」

(な、なんだこのユニットは!まさにはまり役のユニットというかなんというか・・。)

・・そんなことを思っていると、A君は続けました。

「あの京都のときはすごかったなぁ」

と京都に遠征ライブに行ったときに体験した話を語ってくれました。

「あれはですね・・・・」

A君の生々しく恐ろしい体験に、身じろぎもせず聞き入っていた訳なんですが、
途中からなんかBちゃんの様子がおかしくなってきたことに気付きました。

ずっと虚空を見つめてブツブツ言い始めたのです。

「くんな・・・・くんなよ

こっちみんな・・

さわんな・・・

あっちいけよ

くんなよ

みるなみるなみるなみるな・・・・やめろ!」

目つきも口調も、普段話してた時と全く豹変してしまい、ずっと鏡の方を見ながらつぶやき続けたのです。

A君はこう言いました。

「あ、やばいね。こういう話してると寄ってきちゃうんだよね」

スタジオ独特の閉塞感もあってか、僕はちょっと空気が淀んできたのを感じました。

なんか肩が重くて、呼吸がしにくい、あの感じ。

それに加えてほぼ全面が鏡で、意図せず自分の後ろも見えてしまうのが逆に怖さを感じさせました。

「んー・・これはちょっとやばいなー」とA君がいいはじめたとき、

カラカラカラカラ・・・・・コツンッ

僕のボールペンが棚の奥の方から前触れもなく落ちて来ました。

棚はしっかりと作ってあり、もちろん水平です。

加えて僕のボールペンはキャップが胸ポケットに掛けられるタイプのものだったので、

自発的に転がることはありえません。

床に頭から落ちて頭がつぶれてしまったボールペンを

「!?」

という表情で見つめていた僕にA君は言いました。

「今 なんで落ちたと思う」

「・・・・。」

僕は何も言えませんでした。


怪談は好きだけど、実際体験するのはとても嫌いな僕は(要するにチキン)、

ここは明るい曲を強引にやって雰囲気を変えるしかない!と思い、

「あれあれ、あの曲やりましょう。

ちょっとこの空気変えた方がいいですよね!ほら、Bちゃんも、もう歌おう!」

A君も「そうだね、ちょっとやってみようか」と賛同してくれ、リハーサルを再開することになりました。

そのユニットが持ってる一番明るく勢いのいい曲をやっていると、どことなく空気が和んで行く気がしました。

続けて2、3曲と続けてやり、完全に雰囲気が消えた感じがしました。

その間もずっとBちゃんが僕とベースアンプの間をじっと見てたのがものすごく気になりましたが・・・。

その日はそれ以上何もなく、曲も固まったのでホッと一息。

「せっかくだから飲みいきましょうか!」とB君が誘ってくれるままに、

町田の酒場でほろ酔いになってから家路についたのでした。


帰宅してからもほろ酔いでしたが、先ほども言ったように本番が近かったので、

確認の意味でリハの録音音源を聞いて復習しておくことにしました。

全曲ばっちり確認を終え、今日はもう寝ようと思いましたが、

ふとその怪談を始めた時のことを思い出しました。

「そういえば、レコーダー止めなかったよな・・・・。 、

ということはその一部始終をレコーダーは録音しているはず。聞いてみようか・・・?いや・・・うーん。」

多少の恐怖心はありましたが、好奇心の方がそれをはるかに上回ったため、

すぐにその問題の場面を再生してみました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「んー・・これはちょっとやばいなー」

カラカラカラカラ・・・・・コツンッ

「!?」

「今 なんで落ちたと思う」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

んーばっちり録れてる。

でも、特に変わったことはない・・?かな?って思ったその時でした。

曲が始まったと同時に「キュルリリリンっ キュルリリリンっ キュルリリリンっ」という音が響き続けました。

この音、ギタリストなら聞き覚えのある音なんですが、ギターって弦が張ってありますよね。

押さえるところから、

チューニングを調整するツマミ(ペグといいます)の間にはテコみたいな、弦を支える部位があります。

そこから上は押さえることができず、

かき鳴らしたら音は出ますが不協和音がするので基本的には使用しません。

また普通に弾いている最中は、

押さえている弦を右手でかき鳴らしているので、絶対に触れるはずがない場所です。

そこをずっとかき鳴らしている音が録音に重なっていたのです。

曲の間、最初から最後まで。

さらに曲のブレイク(一瞬無音になる瞬間)になると

「ふふふっ」


「くすくすくす」


という声が聞こえてくるのです。


しかも、ボイスレコーダーに声が近いのです。ほぼ、正面から声を録音した感じ。

それって、・・・・

そう、僕とマイクの間からその声は聞こえてきたのです。

曲が終わると間髪入れず

「やっと気付いた?」

という声がイヤホンから聞こえてきました。

その瞬間耳からイヤホンをバッとはずし、興奮のあまりその場でデータを初期しました。

それ以来、スタジオでは怖い話は絶対しないようにしています。




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